電圧降下の計算方法単相2線・三相3線・単相3線の式と係数、内線規程の許容値と早見表
電圧降下は、電線の抵抗で電源側より負荷側の電圧が下がることです。配線が長いほど、電流が大きいほど、電線が細いほど大きくなります。この記事では、電線メーカー・照明メーカーの技術資料にある簡易計算式と係数(35.6・30.8・17.8)、内線規程(JEAC 8001)の幹線・分岐回路の電圧降下の許容値とこう長60mを超えるときの表をもとに、計算例、必要な電線の太さの逆算、こう長の早見表、よくある間違いまでをまとめます。
電圧降下の簡易計算式
電線の抵抗だけで計算する簡易式は、次の形です。
e = K × L × I ÷(1,000 × A)
- e:電圧降下(V)
- K:配線方式で決まる係数(下の表)
- L:電線のこう長(電源から負荷までの片道の長さ、m)
- I:負荷の電流(A)
- A:電線の断面積(mm²)
配線方式ごとの係数
| 配線方式 | 係数 K | 降下の対象 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 35.6 | 線間 |
| 三相3線式 | 30.8 | 線間 |
| 単相3線式 | 17.8 | 対中性線 |
単相2線式は100V・200Vの回路、三相3線式は200Vの動力などです。単相3線式(100/200V)と三相4線式は17.8で、電圧線と中性線の間の電圧降下を出します。
係数の出どころ
係数は、銅線の抵抗から出ています。標準軟銅の抵抗率は 1/58 Ω·mm²/m で、電線の導電率を97%とすると、断面積1mm²・長さ1kmの電線1本の抵抗は 1,000 ÷(58 × 0.97)≒ 17.8Ω です。
- 単相2線式は、行きと帰りの2本で電圧が下がるので 2 × 17.8 ≒ 35.6
- 三相3線式は、線間の電圧降下が1本分の √3 倍なので √3 × 17.8 ≒ 30.8
- 単相3線式は、負荷が左右で平衡していれば中性線に電流が流れないので、外側の線1本分の 17.8
この式は、力率を1とし、電線のリアクタンス(交流で生じる抵抗以外の成分)を無視した簡易式です。屋内配線ではこれで差し支えない場合が多いとされていますが、リアクタンスと力率の影響まで見るときは、電線メーカーの資料にある e = K × I × L ×(R cosθ + X sinθ)の式で計算します。
電圧降下の許容値(内線規程1310節)
こう長60m以下のとき
内線規程(1310-1)では、低圧の配線の電圧降下は、幹線と分岐回路でそれぞれ標準電圧の2%以下とすることを勧告しています。電気使用場所の中に設けた変圧器から供給する場合は、幹線を3%以下にできます。
| 供給のしかた | 幹線 | 分岐回路 |
|---|---|---|
| 低圧で受電 | 2%以下 | 2%以下 |
| 構内の変圧器 | 3%以下 | 2%以下 |
「低圧で受電」は電気事業者から低圧で受電する場合(住宅・小さな店舗など)、「構内の変圧器」は使用場所内の変圧器から供給する場合(キュービクルのある建物など)です。
こう長が60mを超えるとき
供給変圧器の二次側端子(低圧受電なら引込線取付点)から、いちばん遠い負荷までの電線のこう長が60mを超えるときは、上の2%(3%)の代わりに、負荷電流で計算した幹線と分岐回路の合計の電圧降下を、次の表の値以下とすることができます。
| こう長 | 構内の変圧器 | 低圧で受電 |
|---|---|---|
| 120m以下 | 5%以下 | 4%以下 |
| 200m以下 | 6%以下 | 5%以下 |
| 200m超 | 7%以下 | 6%以下 |
2%は、100Vなら2V、200Vなら4Vです。同じ電圧降下(V)でも、200Vの回路のほうが割合(%)は半分になります。
電圧降下の計算例
例1:単相100V・15A・こう長30m(分岐回路)
VVF 2.0mm(断面積 3.14mm²)なら、e = 35.6 × 30 × 15 ÷(1,000 × 3.14)≒ 5.1V で、100Vの5.1%です。2%(2V)を超えます。
VVF 2.6mm(5.31mm²)にすると、35.6 × 30 × 15 ÷ 5,310 ≒ 3.0V(3.0%)で、まだ超えます。100Vで15A流す負荷を30m先に置くなら、電線をさらに太くするか、負荷の近くに分電盤を置く、200Vの機器にするなどを考えます。
例2:単相200V・20A・こう長15m(IHやエアコンの専用回路)
VVF 2.0mmで、e = 35.6 × 15 × 20 ÷ 3,140 ≒ 3.4V。200Vに対して1.7%なので、2%以内です。同じ条件を100Vで考えると3.4%になり、超えてしまいます。
例3:単相3線式100/200V・幹線40A・こう長25m
14mm²のケーブルで、e = 17.8 × 25 × 40 ÷(1,000 × 14)≒ 1.27V。電圧線と中性線の間の100Vに対して1.27%で、2%以内です。
例4:三相200V・20A・こう長50m(動力)
5.5mm²なら、e = 30.8 × 50 × 20 ÷(1,000 × 5.5)= 5.6V(2.8%)で2%を超えます。8mm²なら 30.8 × 50 × 20 ÷ 8,000 ≒ 3.85V(1.9%)で2%以内になります。
必要な電線の太さを逆算する
許容できる電圧降下 e が決まっていれば、式を入れ替えて、必要な断面積を出せます。
A = K × L × I ÷(1,000 × e)
単相100V・20A・こう長20mで2%(2V)に収めるなら、A = 35.6 × 20 × 20 ÷(1,000 × 2)≒ 7.1mm² なので、それより太い8mm²を選びます。VVF 2.6mm(5.31mm²)では足りません。
電圧降下で選んだ太さとは別に、許容電流(電線に流し続けてよい電流)も満たす必要があります。電線管に入れると許容電流は小さくなるので、電線の許容電流で確かめてください。太さは「許容電流」と「電圧降下」の両方を満たす方で決めます。
2%に収まるこう長の早見表
単相2線式100V(2V以内)
L = 1,000 × A × e ÷(K × I)で計算した、2%に収まる最大のこう長(m)です。
| 電線 | mm² | 10A | 15A | 20A | 30A |
|---|---|---|---|---|---|
| VVF 1.6mm | 2.01 | 11.3 | 7.5 | 5.6 | 3.8 |
| VVF 2.0mm | 3.14 | 17.6 | 11.8 | 8.8 | 5.9 |
| VVF 2.6mm | 5.31 | 29.8 | 19.9 | 14.9 | 9.9 |
| より線 | 8 | 44.9 | 30.0 | 22.5 | 15.0 |
| より線 | 14 | 78.7 | 52.4 | 39.3 | 26.2 |
単線の断面積は、直径から π × d² ÷ 4 で計算した値です(1.6mm=2.01mm²、2.0mm=3.14mm²、2.6mm=5.31mm²)。電流は、ブレーカーの定格ではなく、実際に使う負荷の電流で計算します。表の電流をずっと流すと、細い電線では短いこう長でも2%を超えるという計算になります。
三相3線式200V(4V以内)
| mm² | 10A | 20A | 30A | 50A |
|---|---|---|---|---|
| 3.5 | 45.5 | 22.7 | 15.2 | 9.1 |
| 5.5 | 71.4 | 35.7 | 23.8 | 14.3 |
| 8 | 103.9 | 51.9 | 34.6 | 20.8 |
| 14 | 181.8 | 90.9 | 60.6 | 36.4 |
| 22 | 285.7 | 142.9 | 95.2 | 57.1 |
| 38 | 493.5 | 246.8 | 164.5 | 98.7 |
単位はmです。60mを超える長さは、上の「こう長が60mを超えるとき」の許容値(幹線と分岐回路の合計)で考え直します。
電圧降下の計算でよくある間違い
こう長を往復の長さで入れる
L は片道の長さです。行きと帰りの分は係数(35.6など)にすでに入っているので、往復の長さを入れると2倍の値になります。
単相3線式に35.6を使う
単相3線式の100Vの負荷は、電圧線と中性線の間につながっています。負荷が平衡しているとみなして17.8を使い、100Vに対する割合で判断します。左右の負荷が大きく偏るときは、中性線にも電流が流れて電圧降下が大きくなります。
VVFの「2.0」を断面積と取り違える
VVF 2.0mmの「2.0」は導体の直径で、断面積は3.14mm²です。より線の「5.5」「8」は断面積(mm²)です。
許容電流だけで太さを決める
許容電流に余裕があっても、こう長が長いと電圧降下で足りなくなります。逆に電圧降下だけで選ぶと、許容電流が足りないことがあります。両方を計算します。
電圧降下についてよくある質問
電圧降下は何%までならいいですか
内線規程では、幹線と分岐回路でそれぞれ2%以下とすることを勧告しています。使用場所内の変圧器から供給するときは幹線3%以下にでき、こう長が60mを超えるときは、幹線と分岐回路の合計で4〜7%以下(こう長と供給のしかたによる)とすることができます。
35.6・30.8・17.8は何の数字ですか
銅線1mm²・1kmの抵抗(約17.8Ω)に、配線方式ごとの本数の分(単相2線式は2倍、三相3線式は√3倍)を掛けた係数です。
電圧降下が大きいとどうなりますか
負荷側の電圧が下がります。照明メーカーの資料では、電圧降下が6%を超えると放電灯(HIDランプ)は明るさが落ちたり消えたりし、LED照明も正常に点灯できなくなるとしています。電動機は、かかる電圧が下がると始動するときの力(始動トルク)が電圧の2乗に比例して小さくなります。下がった分の電力は電線で熱になります。
100Vより200Vのほうが電圧降下に有利なのはなぜですか
同じ電力・同じ太さ・同じこう長なら、200Vのほうが電流が半分で、電圧降下(V)が半分になります。さらに基準の電圧が2倍なので、割合(%)では4分の1になります。









