垂木掛けの高さの計算下屋・庇を口脇と峠から出す式と計算例
下屋(差し掛け屋根)や庇の垂木掛けの高さは、軒桁の上で垂木の下端が通る点から、垂木掛けまでの水平の距離に勾配を掛けて出します。この記事では、建築用語の辞典と、ものつくり大学の大工規矩術の教材にある峠・口脇の決まりをもとに、垂木掛けの上端が直角のときと勾配に削るときの基準の違い、口脇の深さから垂木の下端の位置を出す方法、5寸勾配と4寸勾配の計算例、早見表、屋根の上面の高さの出し方までをまとめます。
垂木掛けとは
垂木掛け(たるきかけ)は、差し掛け屋根や庇の垂木を、柱(壁)の側で受けるために取り付ける横材です。建築用語.netでは、上部を庇の勾配に削り、垂木彫りをして、柱にえり輪欠きして取り付けるものと説明しています。いまの住宅では、柱の外に面材(構造用合板など)を張り、その上から垂木掛けを留める納まりも多く、上端を削らずに直角のまま使う現場もあります。
垂木の反対の端は、軒桁に乗ります。垂木掛けの高さが違うと、垂木が軒桁の口脇に合わなくなったり、屋根の勾配が図面と変わったりします。下屋は建て方の日に組むことが多いので、高さは前もって計算しておきます。
高さの基準になる峠と口脇
ものつくり大学の大工規矩術の教材では、垂木が桁や母屋に掛かるとき、桁の一部を垂木の傾斜に合わせて欠き取ったところを口脇(くちわき)、桁の上端の心墨と垂木の下端の交点を峠(とうげ)と呼んでいます。桁の上端を峠に合わせる場合と、峠より下げる場合があり、口脇での断面の欠けを少なくするため、峠より桁の上端を数mm下げることが多いとしています。
垂木掛けの高さの計算でいちばん使いやすいのは、垂木の下端が軒桁の上端を通る点(口脇の奥)です。ここを高さの0にすると、垂木掛けの高さを桁の上端から測ってそのまま出せます。
- 口脇の奥行=口脇の深さ÷(勾配÷10)
- 口脇の奥は、軒桁の外(軒先側)の面から、奥行の分だけ内(壁側)に入った位置
- 桁の上端を峠に合わせるときは、口脇の深さ=桁の幅の半分×(勾配÷10)で、口脇の奥はちょうど桁芯の上になる
例えば幅105mmの桁で5寸勾配、口脇の深さ15mmなら、奥行は15÷0.5=30mmです。峠に合わせると口脇の深さは52.5×0.5=26.25mmになるので、15mmの口脇は、桁の上端を峠より52.5×0.5−15=11.25mm下げた納まりにあたります(展開図ラボの計算)。
垂木掛けの高さの計算式
垂木の下端は、口脇の奥から壁に向かって、水平に1進むごとに勾配÷10ずつ上がります。そのため垂木掛けの高さは、次の式で出せます。
垂木掛けの高さ(桁の上端から)=口脇の奥から基準の位置までの水平距離×勾配÷10
基準の位置は、垂木掛けの上端の形で変わります。大工の作業手順を解説した「大工マニュアル」でも、上部が勾配にカットされている場合と直角の場合で、距離の取り方を分けています。
| 上端の形 | 距離を測る位置 |
|---|---|
| 直角のまま | 垂木掛けの前(軒側)の面 |
| 勾配に削る | 垂木掛けの壁側の面 |
上端が直角のままだと、垂木の下端は垂木掛けの前(軒側)の角にだけ当たり、壁側にはすき間ができます。前の面までの距離で計算するので、壁側の面までの距離より、垂木掛けの厚さの分だけ短くなります。勾配に削る場合は、壁側の角が上端の最も高い所になり、前の角はそれより厚さ×勾配÷10だけ低くなります。
計算例:5寸勾配・桁芯まで900mm
柱芯から桁芯まで900mm、柱と桁の幅105mm、面材の厚さ60mm、垂木掛け45×105mm(上端は直角のまま)、桁の口脇の深さ15mm(5分)、5寸勾配の下屋です。Yahoo!知恵袋で質問されていた条件に、柱と桁の幅を105mmとして当てはめました。表の位置は柱芯から、高さは桁の上端から測った値です。
| 求めるもの | 計算 | 値(mm) |
|---|---|---|
| 口脇の奥行 | 15÷0.5 | 30 |
| 口脇の奥 | 900+52.5−30 | 922.5 |
| 垂木掛けの前の面 | 52.5+60+45 | 157.5 |
| 水平距離 | 922.5−157.5 | 765 |
| 上端の高さ | 765×0.5 | 382.5 |
| 下端の高さ | 382.5−105 | 277.5 |
桁の上端から382.5mm上に、垂木掛けの上端(前の角)を合わせます。同じ条件で上端を勾配に削るなら、壁側の面までの距離は922.5−112.5=810mmで、壁側の角の高さは810×0.5=405mmです(展開図ラボの計算)。水平765mmと5寸勾配の高さは、勾配の換算ツールに入れても382.5mmと出ます。
計算例2:4寸勾配・桁芯まで1365mm
柱芯から桁芯まで1365mm、柱と桁の幅105mm、面材なしで柱に直接取り付ける垂木掛け(厚さ45mm、上端を勾配に削る)、桁の上端を峠に合わせる4寸勾配の下屋です。位置は柱芯から、高さは桁の上端から測った値です。
| 求めるもの | 計算 | 値(mm) |
|---|---|---|
| 口脇の深さ | 52.5×0.4 | 21 |
| 口脇の奥 | 桁芯の上 | 1365 |
| 壁側の面 | 柱の面 | 52.5 |
| 水平距離 | 1365−52.5 | 1312.5 |
| 壁側の角 | 1312.5×0.4 | 525 |
| 前の角 | 525−45×0.4 | 507 |
峠に合わせた桁なので、桁芯の上の桁の上端がそのまま峠です。壁側の角を桁の上端から525mm、前の角を507mmにして、上端を4寸勾配に削ります。
早見表:水平距離と勾配で出す高さ
口脇の奥から基準の位置までの水平距離ごとの、垂木掛けの高さ(桁の上端から)です。距離×勾配÷10で計算しています。
| 水平距離 | 2寸 | 3寸 | 4寸 | 5寸 |
|---|---|---|---|---|
| 500mm | 100 | 150 | 200 | 250 |
| 750mm | 150 | 225 | 300 | 375 |
| 1,000mm | 200 | 300 | 400 | 500 |
| 1,250mm | 250 | 375 | 500 | 625 |
| 1,500mm | 300 | 450 | 600 | 750 |
| 2,000mm | 400 | 600 | 800 | 1,000 |
表の値の単位はmmです。表にない距離や勾配は、勾配の換算ツールに勾配と水平距離を入れると出せます。
屋根の上面の高さも確かめる
垂木掛けの上には、垂木・野地板・屋根材が乗ります。2階の窓の下や外壁の見切りに近い下屋では、壁の面での屋根の上面の高さも出しておきます。勾配のある垂木の成(直角に測った高さ)は、鉛直に測ると成×伸び率になります。
- 伸び率=√(1+(勾配÷10)²)。5寸勾配で1.118、4寸勾配で1.077
- 壁の面での垂木の下端=口脇の奥から壁の面までの距離×勾配÷10
- 壁の面での野地板の上面=垂木の下端+(垂木の成+野地板の厚さ)×伸び率
計算例1の条件で、垂木の成60mm、野地板12mmなら、壁の面での垂木の下端は810×0.5=405mm、野地板の上面は405+(60+12)×1.118=485.5mmです(桁の上端から、展開図ラボの計算)。ここに屋根材と、壁との取り合いの雨押えの立ち上がりが加わります。垂木の長さは垂木の長さの計算方法と同じ考え方で、水平距離に伸び率を掛けて出します。
垂木掛けを取り付ける手順
- 軒桁の位置と口脇の深さを決め、口脇の奥の位置を出す。
- 垂木掛けの上端の形(直角か勾配に削るか)を決め、基準の位置までの水平距離を測る。
- 水平距離×勾配÷10で高さを出し、桁の上端の高さに足して、壁に垂木掛けの上端の墨を打つ。
- 墨は左右の端と途中で出し、水平を確かめてから垂木掛けを留める。
- 垂木を1本仮に乗せ、口脇と垂木掛けの両方に当たるか確かめてから残りを掛ける。
桁の上端と壁の墨の高さの関係は、水盛りやレーザー墨出し器、オートレベルで同じ基準から出すと、柱ごとのばらつきが出にくくなります。
垂木掛けの高さでよくある間違い
柱芯や桁芯から距離を測る
高さの0にするのは、垂木の下端が桁の上端を通る口脇の奥です。桁芯から測ると、桁の上端を峠に合わせた場合以外は高さがずれます。柱の側も、垂木掛けが当たる面(前の面か壁側の面)まで測ります。
面材や垂木掛けの厚さを引き忘れる
柱の面ではなく、面材と垂木掛けの厚さの分だけ外に出た面が基準です。計算例1では、厚さを足すかどうかで水平距離が105mm変わり、高さは52.5mm違います。
上端が直角なのに壁側の角で計算する
上端が直角の垂木掛けは、前の角に垂木が当たります。壁側の角で高さを合わせると、垂木掛けの厚さ×勾配÷10だけ高くなり、垂木が口脇から浮きます。
口脇の深さを決めないまま高さを出す
口脇の深さが変わると、口脇の奥の位置も変わります。桁の口脇は、桁の上端の位置、桁の大きさ、勾配で変わるので、先に決めてから垂木掛けの高さを出します。
垂木掛けについてよくある質問
垂木掛けの高さはどこから測りますか
軒桁の上端から測ると計算が簡単です。垂木の下端が桁の上端を通る口脇の奥を0にして、そこから垂木掛けまでの水平距離×勾配÷10が、桁の上端から垂木掛けの上端までの高さになります。
5寸勾配で水平距離765mmなら何mm上がりますか
765×0.5=382.5mmです。4寸勾配なら765×0.4=306mmです。
垂木掛けの上端は削りますか
建築用語.netでは、上部を庇の勾配に削るものとしています。削らずに直角のまま使う場合は、垂木が前の角だけに当たるので、前の面までの距離で高さを出します。どちらにするかは、現場や会社の納まりに合わせてください。
峠とは何ですか
桁などの上端の心墨と、垂木の下端の交点です。桁の上端を峠に合わせる納まりと、数mm下げる納まりがあります。









