螺旋階段の手摺の長さの計算1回転の上がり・定規の高さと曲げの半径
螺旋階段(らせん階段)の手摺は、平面で見ると円、横から見ると一定の勾配で上がる線です。長さは、円周を底辺、上がりを高さにした直角三角形の斜辺で出せます。この記事では、手摺の長さの計算式、蹴上げと1段の角度から1回転の上がりを出す方法、手摺の芯の半径850mmの計算例、床に描いた円に立てる定規の高さの表、曲げ加工のときに知っておきたい螺旋の曲率半径、回り階段の踏面の測り方の決まり(建築基準法施行令第23条)までをまとめます。
螺旋階段の手摺の長さの計算式
螺旋の手摺を、円筒に巻いた紙をはがすように平らに開くと、直角三角形の斜辺になります。底辺は手摺が平面で回った円周の長さ、高さはそのあいだに上がる高さです。
- 1回転の手摺の長さ=√((2π×r)²+T²)
- 角度Θ回る手摺の長さ=1回転の手摺の長さ×Θ÷360
- 手摺の勾配(角度)=atan(T÷(2π×r))
rは柱の中心から手摺の芯までの半径、Tは手摺が1回転するあいだに上がる高さ(ピッチ)です。180°回って高さH上がるなら、長さは√((π×r)²+H²)です。Yahoo!知恵袋の回答でも同じ形の式が示されています。
半径には、階段の外周の半径ではなく、手摺の芯(パイプの中心)の半径を使います。手摺を踏板の端より内側に付けるか、外側に付けるかで半径が変わり、長さも変わります。
1回転の上がりの出し方
螺旋階段は、踏板が同じ角度ずつ回りながら、同じ蹴上げずつ上がります。手摺も段の鼻先に沿って同じ割合で上がるので、1回転の上がりは次の式で出せます。
1回転の上がり(ピッチ)T=蹴上げ×360÷1段の角度
例えば階高2,800mmを13段で上がると蹴上げは2,800÷13=215.38…mm(約215.4mm)で、1段の角度25°なら、T=215.38×360÷25=3,101.5mmです。蹴上げを215.4mmに丸めてから掛けると3,101.8mmになるので、丸めない値で計算します。1°回るごとに8.615mm上がります(展開図ラボの計算)。手摺の高さ(踏面からの高さ)は登り始めから終わりまで同じにするので、手摺の芯も同じ割合で上がります。
計算例:手摺の芯の半径850mm・300°の手摺
階高2,800mm、蹴上げ215.4mm(13段)、1段の角度25°、踏板12枚で300°回る螺旋階段に、手摺の芯の半径850mmの手摺を付けます。表の「1回転分」「300°分」は手摺の長さ、「上がり」は300°のあいだに上がる高さです。
| 項目 | 計算(mm) |
|---|---|
| ピッチT | 2,800÷13×360÷25=3,101.5 |
| 円周 | 2π×850=5,340.7 |
| 1回転分 | √(5,340.7²+3,101.5²)=6,176.0 |
| 300°分 | 6,176.0×300÷360=5,146.6 |
| 上がり | 3,101.5×300÷360=2,584.6 |
| 勾配 | atan(3,101.5÷5,340.7)=30.1° |
300°の上がり2,584.6mmは、踏板12枚分の蹴上げ(2,800÷13×12)と同じです。手摺の長さを、細かく区切った直線の合計で数値計算しても5,146.6mmになり、式と一致しました(展開図ラボの計算)。手摺の勾配の角度は、勾配の換算ツールに高さ3101.5と水平距離5340.7を入れても出せます(30.14°と表示)。
材料は、この長さに、上下の端で水平や直線に延ばす分、端の加工や溶接の取り合いの分を足して用意します。
半径で長さと勾配はどう変わるか
| 手摺の芯の半径 | 300°の長さ | 勾配 |
|---|---|---|
| 850mm | 5,146.6mm | 30.1° |
| 700mm | 4,484.8mm | 35.2° |
上がりは同じでも、半径が小さいほど円周が短くなり、手摺は急になります。同じ階段の内側と外側に手摺を付けると、内側の手摺のほうが短く、急です。
床に描いた円に立てる定規の高さ
螺旋の手摺を合わせるときは、床に手摺の芯の円を原寸で描き、一定の角度ごとに、その位置の高さの定規を立てて形を確かめる方法があります(手摺の製作会社の解説より)。定規の高さは、登り始めからの角度に比例します。
定規の高さ(登り始めからの上がり)=蹴上げ÷1段の角度×回った角度
| 回った角度 | 手摺の芯の上がり |
|---|---|
| 0° | 0mm |
| 30° | 258.5mm |
| 60° | 516.9mm |
| 90° | 775.4mm |
| 120° | 1,033.8mm |
| 150° | 1,292.3mm |
| 180° | 1,550.8mm |
| 210° | 1,809.2mm |
| 240° | 2,067.7mm |
| 270° | 2,326.2mm |
| 300° | 2,584.6mm |
表の上がりに、床から登り始めの手摺の芯までの高さを足したものが、床からの定規の高さです。床の円の上の点の位置は、柱の中心を原点にして、X=850×cos(角度)、Y=850×sin(角度)で出せます。30°なら X=736.1、Y=425.0mmです。
曲げ加工のときの螺旋の曲率半径
螺旋は、平面で見た半径rより、線そのものの曲がりがゆるやかです。螺旋の線の曲率半径ρは、次の式で表されます(螺旋の幾何の式)。
ρ=r+c²÷r(c=1回転の上がりT÷2π)
計算例の手摺(r=850mm、T=3,101.5mm)では、c=493.6mm、ρ=850+493.6²÷850=1,136.7mmです。半径700mmなら1,048.1mmになります(展開図ラボの計算。3点を通る円から数値でも確認)。
パイプを平らに半径850mmで巻いてから上下に引き伸ばすと、線の曲がりは半径850mmのままなので、平面の半径は850mmより小さくなります。平面で半径850mmにしたいときの曲げの目安が、ρの1,136.7mmです。実際は、材料の戻り(スプリングバック)や引き伸ばすときの変形があるので、床の円と定規に当てながら合わせます。
回り階段の踏面の決まり
螺旋階段の段の寸法も、階段の決まりに合わせる必要があります。建築基準法施行令第23条では、回り階段の部分の踏面の寸法は、踏面の狭い方の端から30cmの位置で測るとしています。住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く)は、蹴上げ23cm以下、踏面15cm以上とすることができます。
- 柱の半径60mm、1段25°なら、狭い方の端から30cmの位置は中心から360mm。そこでの踏面は2π×360×25÷360=157.1mm(展開図ラボの計算)
- 同じ階段で中心から900mmの外周では、2π×900×25÷360=392.7mm
階段には手すりを設けなければならないことも、施行令第25条で決まっています(高さ1m以下の部分を除く)。手摺の高さの決まりと目安は手すりの高さの基準にまとめています。螺旋階段は製品や設計で納まりが決まっていることが多いので、図面とメーカーの資料を優先してください。
螺旋階段の手摺でよくある間違い
階段の外周の半径で計算する
長さを出す半径は、手摺の芯の半径です。外周の半径で計算すると、手摺を内側に付けたときに長すぎる材料になります。
階高の全部を手摺の上がりにする
手摺が上がるのは、手摺が付く範囲の段の分です。踏板12枚で300°回るなら、上がりは蹴上げ12段分の2,584.6mmで、階高の2,800mmではありません。
平面の半径で曲げる
螺旋の線の曲がりは、平面の半径よりゆるやかです。平面の半径のまま巻いて引き伸ばすと、平面の円が小さくなります。
上下の延長と加工の分を足し忘れる
式で出るのは螺旋の部分の長さだけです。上下の水平部分や直線部分、端の加工の分を足して材料を用意します。
螺旋の手摺についてよくある質問
手摺の長さはどう計算しますか
手摺の芯の半径r、1回転の上がりTとして、1回転の長さは√((2πr)²+T²)です。回る角度Θの分は、これに Θ÷360 を掛けます。半径850mm・T3,101.5mm・300°なら5,146.6mmです。
180°回って1,500mm上がる、半径1,000mmの手摺の長さは
√((π×1,000)²+1,500²)=3,481.3mmです。
1回転の上がりはどう出しますか
蹴上げ×360÷1段の角度です。階高2,800mmを13段(蹴上げ215.38mm)、1段25°なら3,101.5mmです。
螺旋に曲げるときの半径は
螺旋の線の曲率半径は r+c²÷r(c=T÷2π)で、平面の半径より大きくなります。半径850mm・T3,101.5mmなら1,136.7mmです。材料の戻りがあるので、最後は床の円と定規で合わせます。









