ささら桁の墨付けと刻み方側桁との違い、さしがねの当て方、残る成と材料の長さの計算
ささら桁は、階段の段板を載せるために、上端を段の形に切り欠いた桁です。墨付けでは、1段ごとの寸法を正確に送ることと、刻んだあとに桁がどれだけ残るか、材料の長さが足りるかを先に確かめることが大事です。この記事では、辞書・建築書の定義、住宅の工事仕様書、階段部材メーカーの施工説明書をもとに、ささら桁と側桁の違い、さしがねでの墨付けの考え方、桁の残る成と必要な長さの計算を、計算例つきでまとめます。
ささら桁と側桁の違い
木の階段の桁には、段板の支え方で2つの形があります(改訂新版 世界大百科事典、彰国社「階段を構成する基本要素」)。
- ささら桁:上端を段の形に切り欠いた桁の上に、段板を載せる。蹴込み板を省くことが多い。
- 側桁(がわげた):桁の側面に溝を彫り、段板と蹴込み板をはめ込む。住宅でいちばん一般的な形。
同じ百科事典では、段裏に出る桁の成(せい)は、ささら桁のほうが側桁より大きくなるとしています。彰国社の資料では、2つは正しく呼び分ける必要があるとしています。なお、階段メーカーによっては「ささら桁」を段板を支える桁の総称として使うこともあります。
仕様書の決まり
住宅金融公庫監修の木造住宅工事仕様書(平成22年版 8.14)では、側げた階段について、段板と蹴込み板の当たりを大入れ彫りにし、くさびを飼って納めると決めています。ささら桁などの側げた階段以外の階段は「特記による」としていて、桁の材寸や段板の厚さの数値は書かれていません。
墨付けの前に寸法を決める
階高(床から上の床まで)と段数、踏面を決めると、桁の寸法が決まります。記号は次のとおりです。
- R(蹴上げ):階高 ÷ 段数
- T(踏面):1段の奥行
- P(ピッチ):上端に沿った1段の長さ。P = √(R² + T²)
- α(勾配):tanα = R ÷ T
- D(成):ささら桁の材の幅
- t:段板の厚さ
蹴上げ・踏面の法令の基準と段数の決め方は、階段の蹴上げ・踏面の計算方法で説明しています。
さしがねでの墨付けの考え方
ささら桁の1段の切り欠きは、蹴上げRと踏面Tを2辺とする直角三角形です。桁の上端の縁を、この三角形の斜辺(長さP)と見て墨を付けます。
- 桁の上端に、1段目の角から 0、P、2P …… と、刻みの位置を巻尺で通しで印す。1段ずつ測って送ると、誤差がたまるため。
- さしがねの長手の目盛T、妻手の目盛Rの2点を、上端の縁の隣り合う2つの印に合わせる。矩の手(角)が桁の内側に入る。
- 長手に沿って引いた線が段板を載せる面(陸水)、妻手に沿って引いた線が段の立ち上がり(立水)になる。
- 次の段も同じように、隣の2つの印に合わせて墨を付ける。
- 1段目は段板の厚さtの分だけ下げて切り、下端は床に載る陸水、上端は上の床を受ける梁の面に合わせた立水で切る。
ここで説明したのは、三角形の形から導いた墨の当て方です。さしがねの基本の使い方(表目・裏目、勾配の出し方)はさしがねの使い方で説明しています。
桁の残る成と必要な長さの計算
残る成(切り欠いたあとの幅)
段の形に切り欠くと、桁は内角の深さの分だけ細くなります。内角の深さは T × R ÷ P なので、刻んだあとに残る成は次の式で出ます。
残る成 = D − T × R ÷ P
必要な長さ(最低)
下端の角から、上の梁の面までを桁の向きに測った長さは、次の式で出ます。1段目を段板の厚さだけ下げる分を引いています。
必要な長さ =(段数 − 1)× P − t × sinα
この長さには、上端のほぞや梁への掛かり、下端の加工の代は入っていません。その分は納まりに合わせて足します。
計算例
| 項目 | 例1 | 例2 |
|---|---|---|
| 階高 | 2,800 | 2,700 |
| 段数 | 14 | 13 |
| 踏面T | 240 | 225 |
| 蹴上げR | 200.0 | 207.7 |
| ピッチP | 312.4 | 306.2 |
| 勾配 | 39.8° | 42.7° |
| 切り欠き深さ | 153.6 | 152.6 |
| 残る成 | 146.4 | 147.4 |
| 必要な長さ | 4,042.1 | 3,654.1 |
単位はmmで、段板の厚さ30mm、桁の成300mmとして展開図ラボで計算した値です。例1の刻みの位置は、1段目の角から 0、312.4、624.8 …… 3,748.9mm の13か所です。
定尺で足りるかを確かめる
ウッドワンのプレカットのささら桁は、成240mm・厚さ72mmで、長さは2,000・3,300・4,050・4,500mmなどです(同社の施工説明書)。例1の必要な長さは4,042.1mmなので、4,050mmの材では余りが約8mmしかなく、上端のほぞや掛かりの代が取れません(展開図ラボの計算)。例2なら、4,050mmで約396mmの余裕があります。
成240mmの材なら、例1で残る成は 240 − 153.6 = 86.4mm になります。成が小さい材ほど、切り欠いたあとの桁が細くなります。
階高・段数・踏面・段板の厚さ・桁の成を入れると、ささら桁の型と刻みの位置、残る成、材料の長さを出せるささら桁の墨付けツールもあります。上の例1の値で開きます。
よくある失敗
1段ずつ送って誤差がたまる
1段ごとに測って印を送ると、小さなずれが段数分たまります。最初に上端へ通しで寸法を印してから、さしがねを当てます。
1段目の段板の厚さを忘れる
1段目を段板の厚さだけ下げないと、1段目だけ蹴上げが段板の厚さ分高くなります。
材料の長さを(段数 × ピッチ)で見る
刻む段は段数より1つ少なく、上端のほぞや掛かりの代は別に要ります。上の式で最低の長さを出し、代を足してから材を選びます。
成の小さい材で刻みすぎる
切り欠きの深さは蹴上げと踏面で決まるので、材の成が小さいと残る成が小さくなります。刻む前に、残る成を計算しておきます。
ささら桁についてよくある質問
ささら桁と側桁はどう違いますか
ささら桁は上端を段の形に切り欠いて段板を載せる桁、側桁は側面に溝を彫って段板をはめ込む桁です。
ささら桁の1段の長さはどう出しますか
蹴上げRと踏面Tから、P = √(R² + T²) で出します。蹴上げ200mm・踏面240mmなら312.4mmです。
ささら桁の長さはどう決めますか
(段数 − 1)× ピッチ から、段板の厚さ × sinα を引いた長さが最低で、これに上端・下端の加工の代を足します。
刻んだあと桁はどれだけ残りますか
桁の成から、T × R ÷ P(内角の深さ)を引いた値です。成300mm・蹴上げ200mm・踏面240mmなら146.4mmです。









