小屋束の長さの計算峠を基準にした母屋・棟木の高さと束の寸法
小屋束の長さは、母屋や棟木の高さが決まれば出せますが、その高さを「どこから測るか」でつまずきやすい寸法です。基準になるのは、軒桁の芯と垂木の下端が交わる「峠(とうげ)」です。この記事では、峠を基準に母屋・棟木の高さを出し、小屋束の長さを計算する式と、勾配ごとの早見表、計算例をまとめます。
小屋束の長さは峠を基準に出す
峠は、桁や母屋の上端の芯と、垂木の下端の線が交わる点です。小屋組みの墨付けでは、この峠を基準にして、そこからの上がり・下がりで各部材の高さを決めていきます。
垂木の下端は屋根の勾配でまっすぐ上がっていくので、軒桁の峠から水平に S 離れた母屋の芯では、垂木の下端は 峠より S × 勾配 だけ高くなります。母屋や棟木の上端をこの線に合わせ、その下に束を立てて梁で受けるので、束の長さは「母屋の下端の高さ − 梁の上端の高さ」で決まります。
なお、桁の上端は峠に合わせる場合と、峠より数mm下げる場合があり、口脇(垂木が掛かる部分を勾配に合わせて欠き取ったところ)での断面欠損を少なくするため、峠より下げることが多いとされています。母屋や棟木も同じように、その芯での峠からの下がりを決めて墨付けします。
小屋束の長さの計算式
勾配を N(寸勾配なら寸 ÷ 10、4寸5分なら0.45)、軒桁の芯から母屋の芯までの水平距離を S とします。
| 求めるもの | 計算式 |
|---|---|
| 母屋の芯での垂木下端の高さ(峠から) | S × N |
| 母屋の上端(峠から) | S × N − 母屋の下がり |
| 母屋の下端(峠から) | S × N − 母屋の下がり − 母屋の成 |
| 梁の上端(峠から) | − 桁の下がり + 梁の上端と桁の上端の差 |
| 小屋束の長さ(梁の上端から母屋の下端まで) | S × N − 母屋の成 − 母屋の下がり + 桁の下がり − 梁が桁より高い分 |
「下がり」は、それぞれの芯で、峠(垂木の下端の線)から部材の上端までを下げた寸法です。桁と母屋の下がりが同じで、梁の上端が桁の上端と同じ高さなら、式は次のように簡単になります。
| 条件 | 小屋束の長さ |
|---|---|
| 桁と母屋の下がりが同じ、梁と桁の上端が同じ | S × N − 母屋の成 |
この長さは梁の上端から母屋の下端までの寸法です。材料を刻むときは、上下のほぞの長さを足します。
計算例1:4寸5分勾配・母屋と棟木105角
母屋の芯が軒桁の芯から910mm、棟木の芯が1,820mm。桁と梁の上端は同じ高さで、桁・母屋・棟木の下がりはそろえます。
| 部材 | 峠からの上がり | 束の長さ |
|---|---|---|
| 母屋(S=910) | 910 × 0.45 = 409.5 | 409.5 − 105 = 304.5 |
| 棟木(S=1,820) | 1,820 × 0.45 = 819.0 | 819.0 − 105 = 714.0 |
単位はmmです。尺で考えると、母屋の束は 3尺 × 4寸5分 = 1尺3寸5分 から母屋の成3寸5分を引いて1尺(約303mm)になり、ほぼ同じ答えです(3尺を910mmとするか909mmとするかの違いです)。
計算例2:梁が桁より高い場合
4寸勾配、母屋は90角、棟木は105角、母屋の芯は910mmと1,820mm、棟木の芯は2,730mm。小屋梁の上端が軒桁の上端より30mm高く、桁・母屋・棟木の下がりはどれも5mmとします。
| 部材 | 計算 | 束の長さ |
|---|---|---|
| 1本目の母屋(S=910) | 364 − 90 − 5 + 5 − 30 | 244 |
| 2本目の母屋(S=1,820) | 728 − 90 − 5 + 5 − 30 | 608 |
| 棟木(S=2,730) | 1,092 − 105 − 5 + 5 − 30 | 957 |
単位はmmです。下がりが同じなら打ち消し合いますが、梁と桁の高さの差は、そのまま束の長さから引きます。棟木のように成が違う部材は、その成で引きます。
早見表:峠からの上がり(S × N)
軒桁の芯からの水平距離ごとの、垂木の下端の上がりです。桁と母屋の下がりがそろい、梁と桁の上端が同じなら、この値から母屋の成を引いたものが束の長さです。
| 勾配 | 455 | 910 | 1,820 | 2,730 | 3,640 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3寸 | 136.5 | 273.0 | 546.0 | 819.0 | 1092.0 |
| 3寸5分 | 159.3 | 318.5 | 637.0 | 955.5 | 1274.0 |
| 4寸 | 182.0 | 364.0 | 728.0 | 1092.0 | 1456.0 |
| 4寸5分 | 204.8 | 409.5 | 819.0 | 1228.5 | 1638.0 |
| 5寸 | 227.5 | 455.0 | 910.0 | 1365.0 | 1820.0 |
| 5寸5分 | 250.3 | 500.5 | 1001.0 | 1501.5 | 2002.0 |
| 6寸 | 273.0 | 546.0 | 1092.0 | 1638.0 | 2184.0 |
単位はmmです。表の見出しは軒桁の芯から母屋・棟木の芯までの水平距離です。ほかの距離や勾配は、勾配の換算ツールの「水平距離ごとの高さ」で出せます。
束の長さを墨付けする手順
- 軒桁に峠の位置(桁の芯と垂木の下端の交点)を決め、桁の上端を峠からどれだけ下げるかを決めます。
- 母屋・棟木の芯までの水平距離 S を図面で確かめ、S × 勾配で峠からの上がりを出します。
- 母屋・棟木の上端の下がりと成を引いて、母屋・棟木の下端の高さを出します。
- 梁の上端が峠から見てどこにあるか(桁との高さの差)を確かめ、束の長さを出します。
- 束にほぞの長さを足して刻みます。
束が多いときは、1本ずつ計算するかわりに、峠から母屋ごとの上がりを目盛った定規を作って梁に当てる方法や、梁に峠を基準にした墨を打って、そこから各束の高さを測る方法もあります。梁が丸太や曲がり材で上端がそろわないときは、束の位置ごとに梁の上端を測ってください。
よくある失敗と注意点
勾配の寸のまま掛けてしまう
4寸5分勾配は、水平1に対して0.45上がる勾配です。910 × 4.5 のように寸の数字のまま掛けると、10倍の長さになります。
母屋の成を引き忘れる
S × N は母屋の上端(垂木の下端)の高さです。束が受けるのは母屋の下端なので、母屋の成を引きます。棟木と母屋の成が違うときは、それぞれの成で引きます。
梁と桁の高さの差を入れ忘れる
梁の上端が桁の上端より高い納まりでは、その差の分だけ束が短くなります。図面の断面で、桁と梁の上端の関係を確かめてください。
尺とmmを混ぜる
勾配や間隔を尺で、部材の成をmmで考えると、換算のずれが出やすくなります。計算はどちらかにそろえます。
小屋束の長さについてよくある質問
峠とは何ですか
軒桁などの上端の芯と、垂木の下端の線が交わる点です。小屋組みの高さを決める基準にします。
4寸勾配で母屋の間隔が910mmなら、束はいくつ違いますか
910 × 0.4 = 364mm ずつ長くなります。母屋の成と下がりがそろっていれば、隣り合う束の長さの差は364mmです。
棟束の長さはどう出しますか
軒桁の芯から棟木の芯までの水平距離に勾配を掛け、棟木の成と下がりを引いて出します。母屋の束と同じ考え方です。
束の長さは芯で測りますか
高さは、各部材の芯の位置での垂木の下端の高さで考えます。束の長さは、梁の上端から母屋の下端までの寸法で、ほぞは別に足します。
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