オートレベルの使い方据え付け・標尺の読み方、器械高で高さを出す計算、杭打ち調整法の点検
オートレベル(自動レベル)は、基礎や外構、設備の現場で高さを出すときに使う測量機です。この記事では、トプコン・ソキア・ムラテックKDS・タジマ・ライカの取扱説明書と、国土地理院の作業規程の準則、JIS B 7912-2をもとに、レベルの据え付けから標尺の読み方、器械高を使った高さの出し方、杭打ち調整法での点検までをまとめます。手順や許容値はメーカーで違うところがあるので、最後は自分の機種の取扱説明書で確かめてください。
オートレベルとは
オートレベルは、望遠鏡の中の自動補正機構(コンペンセータ)が少しの傾きを自動で補正し、視準線を水平に保つレベルです。円形気泡管の気泡が○の中に入っていれば、正しく調整された機械では自動補正機構で水平が保たれます(トプコン・ソキア・タジマ・KDSの取扱説明書)。取扱説明書を確認した5社の機種では、自動補正の範囲はどれも±15′、円形気泡管の感度は10′/2mmでした。
レベルの種類と違い
- オートレベル:自動補正機構で視準線を水平にし、人が標尺の目盛を読む
- 気泡管レベル:主気泡管の気泡を合わせて視準線を水平にし、人が読む
- 電子レベル:バーコード標尺の目盛を機械が自動で読む
- 回転レーザー:レーザー光を回して水平面を作り、受光器で高さを拾う
国土地理院の作業規程の準則は、水準測量のレベルを気泡管レベル・自動レベル・電子レベルの3つに分けて性能を決めています。屋内の墨出しに使うレーザー墨出し器は、レーザー墨出し器の使い方で説明しています。水平を確かめる道具の水平器も「レベル」と呼ばれることがありますが、この記事は測量機のオートレベルの話です。
オートレベルの使い方(据え付け)
- 三脚を立てる:脚を目の高さくらいまで伸ばして固定ねじを締め、脚先がほぼ正三角形になるように開きます。脚頭(三脚の上の台)をほぼ水平にして、石突きを踏み込んで地面に固定します。大きな傾きは脚の長さで直し、整準ねじで直すのは小さな傾きだけです。
- 本体を載せる:本体を脚頭に載せ、定心かん(定芯悍)で固定します。球面の脚頭なら、定心かんを少しゆるめて本体をすべらせ、気泡を○の近くに寄せてから締めます。
- 整準する:手前の整準ねじ2本を互いに逆向きに同時に回して、気泡を左右の中央に寄せます。次に残りの1本で前後を合わせ、気泡を○の中央に入れます(ライカの取扱説明書、タジマ・KDSの図と説明)。
- 十字線のピントを合わせる:白い壁や紙など明るい背景に向け、接眼レンズを回して十字線を黒くはっきり見えるようにします。
- 標尺にピントを合わせる:照門やピープサイト(のぞいて向きを合わせる目安)で標尺に向け、合焦つまみで目盛にピントを合わせます。
- 視差がないか確かめる:のぞいたまま目を少し上下左右に動かし、標尺と十字線がずれないか見ます。ずれる場合は十字線のピントから合わせ直します。ずれたまま測ると、測定値に誤差が出ます。
運搬で衝撃を受けると精度が狂うことがあるので、使う前に円形気泡管と十字線(視準線)を点検します(後半の「点検」を参照)。
標尺(スタッフ)の読み方
十字線の横線で読む
標尺の目盛は、十字線の中央の横線が重なった位置で読みます。上下にある短い線(スタジア線)で読まないように注意します。
目盛の見方
例えばマイゾックスの箱尺は、5mm・10mmの直読数字、5cm単位の赤黒の表示、1mごとの黄白の表示になっています(同社の製品説明)。タジマの取扱説明書の図も、5mm幅の白黒の目盛に1cmごとの数字です。目盛の表示は製品で違うので、使う標尺の見方を確かめておきます。
標尺を前後にゆっくり傾ける(ウエービング)
標尺が前後に傾いていると、読みは実際より大きくなります。標尺を前後にゆっくり動かし、いちばん小さい値を読むと、それが垂直に立っているときの値です(タジマの取扱説明書)。トプコンやライカの取扱説明書では「まっすぐに立てる」とだけ書かれています。
スタジア線で距離の目安が分かる
上下のスタジア線にはさまれた標尺の長さ(cm)が、そのまま標尺までの距離(m)の目安になります。例えば32cmなら約32mです。取扱説明書では目安・確認用とされているので、施工の寸法には使いません。
オートレベルで高さを出す方法
2点の高低差は「後視-前視」
高さが分かっている点(ベンチマーク)に立てた標尺の読みを後視、高さを知りたい点の読みを前視といいます。2点の高低差は「後視-前視」で、プラスなら求める点のほうが高く、マイナスなら低くなります。
例:A点の後視1.735m、B点の前視1.224mなら、1.735-1.224=0.511mで、B点がA点より0.511m高い(トプコンの取扱説明書の計算例)。
器械高を使って高さを出す(器高式)
現場の高さ出しでは、器械高(レベルの視準線の高さ)を使うと計算が簡単です。器械高=既知点の高さ+後視、求める点の高さ=器械高-その点の読み、です(ライカの取扱説明書)。この考え方は「器高式」と呼ばれます。
例:ベンチマーク(この現場ではGL±0とする)の後視が1.450mなら、器械高はGL+1.450mです。基礎天端をGL+400mmにしたいときは、標尺の読みが 1.450-0.400=1.050m になる高さに印を付けます。基準の高さが現場ごとに違うので、何を±0にしているかを最初に確かめます。
遠い点・高低差が大きいときは盛り替える(昇降式)
1回の据え付けで見通せないときは、途中に盛替点を作って何回かに分けて測ります。高低差=後視の合計-前視の合計、求める点の高さ=既知点の高さ+高低差、です(トプコン・ソキア・ライカの取扱説明書)。この考え方は「昇降式」と呼ばれます。
| 点 | 後視 | 前視 |
|---|---|---|
| A(10.000m) | 1.520 | |
| 盛替点 | 1.230 | 0.980 |
| B | 1.670 | |
| 合計 | 2.750 | 2.650 |
高低差は 2.750-2.650=+0.100m で、Bの高さは 10.000+0.100=10.100m です(展開図ラボの計算例)。区間ごとに 1.520-0.980=+0.540、1.230-1.670=-0.440 と出して足しても同じです。精度を上げたいときは、AからB、BからAと往復して差を確かめることが取扱説明書で勧められています。
レベルは2点のほぼ真ん中に据える
レベルを2点のほぼ真ん中に据え、後視と前視の距離をそろえると、視準線がわずかに狂っていても両方に同じ量の誤差が出て打ち消し合い、高低差には影響しません(トプコン・ソキア・KDS・タジマの取扱説明書、JIS B 7912-2)。公共測量の作業規程の準則でも「視準距離は等しく」と決めています。
測った高低差から勾配を出す
2点の高低差と水平距離が分かれば勾配が出ます。例えば水平距離3mで高低差30mmなら1/100です。寸勾配・%・角度への換算は勾配の換算ツールでできます。
オートレベルの点検(杭打ち調整法)
円形気泡管の点検
整準ねじで気泡を○の中央に入れ、本体を180°回します。気泡が○から出たら、ずれの半分を整準ねじで戻し、残りの半分を円形気泡管の調整ねじで直します(各社の取扱説明書で共通)。
自動補正機構の点検
標尺を視準したまま三脚や本体を軽くたたき、十字線が一瞬ずれてすぐ元の読みに戻れば正常です(トプコン・ソキア・タジマの取扱説明書)。戻らない場合は販売店などに修理を頼みます。
杭打ち調整法(視準線の点検)
視準線が水平かどうかは、2本の標尺を使う杭打ち調整法で確かめます。
- 平らな場所で、標尺A・Bを30〜50mほど離して立て、その真ん中にレベルを据えて a1・b1 を読みます。a1-b1 が正しい高低差です。
- レベルをAの近く(1〜2m)に移して、a2・b2 を読みます。
- Bの読みが a2-(a1-b1) になっていれば正常です。差があれば、取扱説明書の手順で十字線を調整します。
例:真ん中で a1=1.520、b1=1.340 なら高低差は0.180m。Aの近くで a2=1.605 のとき、Bは 1.605-0.180=1.425 になるはずです。実際の b2 が1.428なら3mmの差です。
メーカーで違う点があります。
- トプコン・ソキア:A・Bは30〜50m、レベルはAから2m。計算値と一致するかで判定(許容値の数値なし)
- タジマ:A・Bは約30〜50m、Aから約2m。差が3mm未満なら正常
- ムラテックKDS:A・Bは50m、Aから1m。計算値と一致するかで判定(許容値の数値なし)
- ライカ:A・Bは約30m、Aから約1m。差が3mmを超えたら調整
十字線の調整ねじを回す向きもメーカーで逆なので、調整は必ず自分の機種の取扱説明書に従います。調整に自信がなければ、販売店やメーカーに頼みます。国内メーカーの取扱説明書では、年1〜2回の定期点検を勧めています。
オートレベルの精度の見方
カタログの「1km往復標準偏差」は、1kmを往復して水準測量したときの標準偏差です(JIS B 7912-2、国土地理院の計算式集)。1回読んだときの誤差という意味ではありません。取扱説明書を確認した現場用の機種では0.7〜2.5mmでした。数字が小さいほど精度が高い機種です。
オートレベルを使うときの注意
- 望遠鏡で太陽を見ない(失明の原因になる)。使わないときはレンズキャップを付け、太陽光の当たらない所に置く(太陽光が焦点を結んで火災の原因になることがある)。
- 雷のときは使わない。高圧線や変電設備の近くでは注意する(標尺は電気を通す)。
- 本体を直接土の上に置かない(ねじ部を傷める)。
- 国内メーカーの取扱説明書では、移動するときは三脚から本体を外すとしている。
- 三脚の固定ねじと定心かんは確実に締める。
現場の決まり
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)では、ベンチマークを木杭やコンクリート杭などで移動しないように設け、周りを養生し、位置・高さ・設置の方法について監督職員の検査を受けることとしています(2.2.2)。遣方には、建物の位置と水平の基準をはっきり示します(2.2.3)。コンクリート舗装の版の厚さは、型枠を据え付けたあとに水糸かレベルで測ります(22.5.6)。
オートレベルについてよくある質問
標尺の目盛はどの線で読みますか
十字線の中央の横線です。上下の短いスタジア線は距離の目安を見るための線です。
後視と前視の違いは何ですか
後視は高さの分かっている点に立てた標尺の読み、前視は高さを知りたい点の読みです。高低差は後視-前視です。
レベルはどこに据えればいいですか
測る2点のほぼ真ん中です。後視と前視の距離をそろえると、視準線のわずかな狂いが打ち消されます。
どのくらいの頻度で点検しますか
使う前に円形気泡管と視準線を点検し、運搬や衝撃のあとも確かめます。国内メーカーの取扱説明書では、年1〜2回の定期点検を勧めています。
杭打ち調整法の許容値は何mmですか
タジマとライカの取扱説明書では3mmです。数値を示していないメーカーもあるので、機種の取扱説明書で確かめてください。
屋内の墨出しには、レーザー墨出し器も使われます。機種の選び方は次の記事で比べています。









