玉掛けの資格技能講習と特別教育の違い・講習の時間と内容
クレーンで荷をつるときに、フックにワイヤロープなどを掛けたり外したりする作業が「玉掛け」です。玉掛けには資格が必要で、つり上げ荷重が1t以上のクレーンでは「玉掛け技能講習」、1t未満では「玉掛けの特別教育」を受けた人でないと作業できません。この記事では、労働安全衛生法と関係する規則・告示をもとに、2つの資格の違い、講習の時間と内容、修了証の扱い、一緒に取ることが多い資格、玉掛けの安全ルールをまとめます。
玉掛けの資格は1tで分かれる
| クレーンなどのつり上げ荷重 | 必要な資格 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1t以上 | 玉掛け技能講習の修了 | 労働安全衛生法施行令 第20条第16号、クレーン等安全規則 第221条 |
| 1t未満 | 玉掛けの特別教育 | 労働安全衛生規則 第36条第19号、クレーン等安全規則 第222条 |
対象はクレーン、移動式クレーン、デリックの玉掛けです。判断の基準は、つる荷の重さではなく、使うクレーンの「つり上げ荷重」です。たとえば2.9tのユニック(小型移動式クレーン)で軽い荷をつる場合でも、技能講習が必要です。
資格がないと本人も作業できない
労働安全衛生法第61条では、資格のない人を就かせてはいけない(事業者の義務)だけでなく、資格のない人は「その業務を行ってはならない」とされています。違反には罰則があります(第119条・第120条)。
18歳未満は玉掛けの業務に就けない
年少者労働基準規則第8条で、クレーンなどの玉掛けの業務は18歳未満の禁止業務になっています。ただし、2人以上で行う玉掛けの補助作業は除かれています。
玉掛け技能講習の内容と時間
玉掛け技能講習は、登録教習機関(日本クレーン協会の支部など)で受けます。科目と時間は、厚生労働省の告示「玉掛技能講習規程」で決められています。
| 区分 | 科目 | 時間 |
|---|---|---|
| 学科 | クレーン等に関する知識 | 1時間 |
| 玉掛けに必要な力学に関する知識 | 3時間 | |
| 玉掛けの方法 | 7時間 | |
| 関係法令 | 1時間 | |
| 実技 | 玉掛け(質量の目測、基本作業・応用作業) | 6時間 |
| クレーン等の運転のための合図 | 1時間 | |
| 合計 | 19時間 | |
最後に、学科と実技の修了試験があります。一般のコースは3日間で行う機関が多いです。
時間が短くなる人
| 受講する人 | 免除される科目 | 合計 |
|---|---|---|
| クレーン・移動式クレーンの運転士免許を持つ人、床上操作式クレーン・小型移動式クレーンの技能講習を修了した人など | 力学(3時間)と合図(1時間) | 15時間 |
| クレーンなどの運転の業務に6か月以上従事した人 | 合図(1時間) | 18時間 |
| 1t以上の玉掛けの補助作業に6か月以上従事した人 | 学科・実技の一部 | 16時間 |
| 1t未満の玉掛けの業務に6か月以上従事した人 | 学科・実技の一部と合図 | 15時間 |
告示で決められた時間です。実際のコースの時間は、機関によって少し長く組まれていることがあります。
年齢と費用の目安
告示には受講の年齢の決まりはありませんが、実施機関では「原則18歳以上」としているところが多く、18歳未満で受講しても修了証は18歳になってから交付する、とする機関もあります。費用は機関によって違い、たとえば日本クレーン協会東京支部の一般コースは、3日間で講習料と資料代を合わせて28,200円(税込)と案内されています。申し込む前に、受ける機関の案内を確かめてください。
玉掛けの特別教育(1t未満)
1t未満のクレーンなどの玉掛けは、事業者が行う特別教育を受ければ作業できます。科目と時間は告示「クレーン取扱い業務等特別教育規程」で決められています。
| 区分 | 科目 | 時間 |
|---|---|---|
| 学科 | クレーン等に関する知識 | 1時間 |
| 玉掛けに必要な力学に関する知識 | 1時間 | |
| 玉掛けの方法 | 2時間 | |
| 関係法令 | 1時間 | |
| 実技 | 玉掛け | 3時間 |
| 合図 | 1時間 | |
| 合計 | 9時間以上 | |
事業者は、特別教育の記録を3年間保存します(労働安全衛生規則第38条)。1t以上のクレーンでも玉掛けをする可能性があるなら、はじめから技能講習を受けておくと、現場で困りません。
修了証の扱い
- 玉掛けの作業をするときは、修了証を携帯する義務があります(労働安全衛生法第61条第3項)。
- 修了証に有効期限はなく、更新の手続きもありません。
- なくしたり、名前が変わったりしたときは、講習を受けた機関に再交付や書替えを申し込みます。機関がなくなっている場合は、厚生労働大臣が指定する機関に申し込みます(労働安全衛生規則第82条)。
- 複数の技能講習の修了証を1枚にまとめた「技能講習修了証明書」(統合カード)も発行されています。特別教育は対象外です。
国の指針では、玉掛けの作業をする人にも、一定期間ごとに安全衛生教育を行うこととされています(事業者の努力義務)。
玉掛けと一緒に取ることが多い資格
玉掛けの資格は「荷を掛ける・外す」ための資格で、クレーンを運転するには別の資格が必要です。
| 運転するもの | 必要な資格 |
|---|---|
| 移動式クレーン 1t未満 | 特別教育 |
| 移動式クレーン 1t以上5t未満(ユニックなど) | 小型移動式クレーン運転技能講習 |
| 移動式クレーン 5t以上 | 移動式クレーン運転士免許 |
| クレーン 5t未満(天井クレーン・ホイストなど) | 特別教育 |
| 床上操作式クレーン 5t以上 | 床上操作式クレーン運転技能講習 |
| その他のクレーン 5t以上 | クレーン・デリック運転士免許 |
小型移動式クレーンの技能講習は学科13時間・実技7時間の20時間ですが、玉掛け技能講習を修了していると、力学と合図が免除されて16時間になります。
玉掛けの安全ルール
用具の強さ(安全係数)
| 用具 | 安全係数 | 根拠 |
|---|---|---|
| ワイヤロープ | 6以上 | クレーン等安全規則 第213条 |
| つりチェーン | 5以上(条件を満たすものは4以上) | 第213条の2 |
| フック・シャックル | 5以上 | 第214条 |
安全係数は、切れる荷重を、かかる最大の荷重で割った値です。
使ってはいけないワイヤロープ(第215条)
- 1よりの間で、素線の数の10%以上が切れているもの
- 直径の減り方が、公称径の7%を超えるもの
- キンクしたもの
- 著しい形くずれや腐食があるもの
つりチェーンは、伸びが製造時の5%を超えたもの、リンクの断面の直径が10%を超えて減ったもの、き裂があるものは使えません(第216条)。フックやシャックルは、変形やき裂があるものは使えません(第217条)。玉掛け用具は、その日の作業を始める前に点検します(第220条)。
合図と、つり荷の下への立入禁止
クレーンを使う作業では、一定の合図を決めて合図をする人を指名し、作業者はその合図に従います(クレーン等安全規則 第25条・第71条)。1か所だけに玉掛けしたときや、つりクランプ1個でつったときなどは、つり荷の下に人を立ち入らせてはいけません(第29条・第74条の2)。
つり角度
国の「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」では、つり角度は原則として90度以内とされています。2本4点半掛けつりや、クランプ・ハッカーを使う場合などは、60度以内とされています。つり角度が大きくなるほど、ワイヤロープ1本にかかる力が大きくなります。
つる荷の重さを見積もる
技能講習の実技には「質量の目測」があり、つる荷のおおよその重さをつかむことが大切です。鋼材なら、体積に鉄の密度(約7.85)を掛けて出せます。たとえば鋼板1m × 2m × 厚さ10mmなら、0.02m³ × 7,850kg/m³ = 約157kgです。鋼板・鋼管・形鋼の重さは、下の「鋼材の重量計算ツール」で出せます。
玉掛けの資格についてよくある質問
玉掛けの資格は何日で取れますか
技能講習の一般のコースは19時間で、3日間で行う機関が多いです。クレーンの運転士免許などを持っていると、短いコースで受けられます。
1t未満のクレーンなら特別教育だけでいいですか
つり上げ荷重が1t未満のクレーンの玉掛けなら、特別教育で作業できます。1t以上のクレーンで玉掛けをするには、技能講習が必要です。
玉掛けの資格に更新はありますか
修了証に有効期限はなく、更新はありません。ただし、国の指針では一定期間ごとの安全衛生教育が求められています。
玉掛けの資格でクレーンを運転できますか
できません。クレーンの運転には、クレーンの種類とつり上げ荷重に応じた、別の資格が必要です。









