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配管・溶接

溶接のビード幅の目安心線径との関係、開先幅とすみ肉の脚長から出す幅、JASS 6の余盛と不整

溶接のビード幅は、何mmにすればいいかが一つに決まっているものではありません。この記事では、中小企業総合事業団の被覆アーク溶接の技能マニュアル(日本溶接協会の協力で作成)と、日本溶接協会がJASS 6などの基準をまとめた資料をもとに、ビード幅の目安の考え方(心線径との関係、開先幅との関係、すみ肉の脚長から出す幅)と、外観の基準でビード幅がどう扱われるかを整理します。仕事では、図面や会社の施工要領書の指定がいちばん先です。

溶接のビード幅とは

ビード幅は、1パスまたは仕上がった溶接ビードの、両側の止端(ビードと母材の境目)の間の長さです。突合せ溶接では開先の幅で、すみ肉溶接では脚長でおおよそ決まります。ビード幅そのものを「何mm以下」と決めた共通の規格はなく、外観の基準では「余盛の高さ」や「幅のそろい方(不整)」を決めるときの区分として使われます。

ISO 15609-1の様式の溶接施工要領書(WPS)には「最大ウィービング幅(mm)」を書く欄があり、日本溶接協会がISO 9606-1の評価試験用に公開しているWPSの例にもこの欄があります(その例では「規定しない」の記号)。振り幅やビード幅は、仕事ごとに施工要領書で決める項目だと考えておくと分かりやすいです。

ビード幅の目安(心線径との関係)

被覆アーク溶接の技能マニュアル(中小企業総合事業団「手溶接技能の伝承 被覆アーク溶接─実技とそのポイント」)では、運棒とビード幅の関係を次のように説明しています。

  • ストリンガ運棒:ビード幅が心線径の約2.5倍程度以下(4mmの棒ならビード幅約10mm程度以下)のときは、溶接棒を進行方向にだけ動かす
  • ウィービング運棒:それより広いビードは、溶接方向と直角にジグザグに振る。運棒幅は心線径の約3倍程度以内にとどめ、過大にしない
  • 振り方:ジグザグのピッチは心線径程度。両端で一時止め、溶融池を見て目的のビード幅と余盛の高さが出ているか確かめる

この目安を棒径ごとに計算すると、次のとおりです。2.5倍はストリンガ運棒で流す幅の目安、3倍はウィービングの振り幅の上限の目安です(展開図ラボの計算)。

心線径約2.5倍約3倍
2.6mm約6.5mm約7.8mm
3.2mm約8.0mm約9.6mm
4.0mm約10mm約12mm
5.0mm約12.5mm約15mm

日鉄溶接工業のイルミナイト系溶接棒A-10のカタログ(溶接施工の要点)では、過大電流や大きなウィービングはX線性能(放射線透過試験の結果)を低下させるので、ウィービングは棒径の2.5倍以内にとどめる、としています。資料によって数字が少し違うので、使う銘柄のカタログも確かめてください。

振り幅を広げすぎると起きること

日本溶接協会の接合・溶接技術Q&Aでは、被覆アーク溶接で過大なウィービングを行うと溶融池が大気にさらされ、ブローホールの原因になるとしています。マニュアルでは、ウィービング両端の停止不足や手ぶれがアンダカットの原因になり、溶接棒の先を溶融池の中にとどめて溶融池の広がりでビード幅を確保すると防げる、としています。広い幅が必要なときは、1パスで無理に振らず、パスを並べて重ねます。

パスを重ねるときの重なり

マニュアルの例では、横向突合せの2層目1パス目は1層目のビード幅の約2/3に重ね、水平すみ肉の2層目1パス目は1層目のビード幅の約1/2〜2/3に重ねています。

運棒のしかたや溶接棒の角度は、アーク溶接のやり方で説明しています。

突合せ溶接のビード幅は開先幅で決まる

突合せ溶接の仕上げのビード幅は、母材の表面での開先の幅に、両側の縁を溶かして少し広がった分を足した幅になります。V形開先の表面の開先幅は、次の式で出せます。

表面の開先幅=ルート間隔+2×(板厚-ルート面)×tan(開先角度÷2)

板厚9mm、開先角度60度、ルート間隔5mmのV形開先で、表面の開先幅が15.4mm、仕上げのビードが片側約1mmずつ広がりビード幅約17.4mmになることを示す断面図
板厚9mm・開先角度60°・ルート面0・ルート間隔5mm(裏当て金あり)の例(数値は展開図ラボの計算)。

計算例:マニュアルの中板(板厚9mm)の練習材の開先は、開先角度60°、ルート面0mm、ルート間隔5mm(裏当て金あり)です。表面の開先幅は 5+2×9×tan30°=5+10.4=約15.4mm です。マニュアルの横向突合せの仕上げ層1パス目では、下側の開先線より約1mm程度外に広がったビードにするとしています。これにならって両側に約1mmずつ広がるとすると、ビード幅は約17.4mmです。

仕上げ層の手前で開先の縁を残す

マニュアルでは、仕上げ層の1つ前の層は、開先面が約1mm程度残るように溶接するとしています。母材の表面まで盛ってしまうと、仕上げ層で溶接線の位置が分からなくなり、ビードが曲がる原因になるからです。立向の仕上げ層では、開先幅を超えた運棒は少しの手ぶれでアンダカットやビード幅の不ぞろいの原因になる、上向の仕上げ層では、ウィービング幅は開先幅にとどめ、両端で止めて溶融池の広がりで母材の表面に余盛を作る、と書かれています。

すみ肉溶接のビード幅は脚長から出せる

すみ肉溶接のビード幅(両側の止端の間)は、2つの脚長を直角をはさむ2辺とした三角形の斜辺の長さです。直角のT継手なら、ビードの表面がふくらんでいても、へこんでいても、止端の位置は脚長で決まるので、幅は次の式で出せます。

ビード幅=√(脚長1²+脚長2²)(等脚なら 脚長×約1.41)

T継手のすみ肉溶接で、脚長6mmと6mmのとき両側の止端の間のビード幅が約8.5mmになることを示す断面図
脚長6mmのすみ肉のビード幅(数値は展開図ラボの計算)。
脚長ビード幅
3mm約4.2mm
4mm約5.7mm
5mm約7.1mm
6mm約8.5mm
8mm約11.3mm
10mm約14.1mm
12mm約17.0mm

脚長が6mmと9mmの不等脚なら、√(36+81)=約10.8mmです。マニュアルの水平すみ肉の説明では、3.2mm以上の溶接棒の1パスで得られる脚長はおよそ「棒径+1〜2mm」程度とされています。それより大きい脚長は、パスを重ねて作ります。

外観の基準でのビード幅の扱い

日本溶接協会のWES-TR 2032の原案「各種溶接構造物における溶接部外観に関する基準の例」は、建築・橋梁・船舶・圧力容器などの外観の基準を一覧にした資料です。ここでは、建築鉄骨のJASS 6(日本建築学会 建築工事標準仕様書 鉄骨工事、2018年)などの値を、この資料の一覧から抜き出します。原典の改定もあるので、仕事では指定された基準の原本で確かめてください。

突合せ溶接の余盛の高さ(ビード幅で区分)

JASS 6の余盛の高さの許容差は、ビード幅Bで次のように分かれています。

ビード幅B管理許容差限界許容差
15mm未満3mm以下5mm以下
15mm以上25mm未満4mm以下6mm以下
25mm以上(4/25)×B以下(6/25)×B以下

余盛の高さは0mmより大きいこと(母材より低くならないこと)が前提です。道路橋示方書(2017年)も、ビード幅の同じ区分で3mm以下・4mm以下・(4/25)×B以下です。上の計算例のビード幅約17.4mmなら、JASS 6の管理許容差は4mm以下の区分に入ります。

ビード幅の不整(幅のそろい方)

  • JASS 6:ビード幅の不整は、溶接の長さ150mmの範囲で管理許容差5mm以下・限界許容差7mm以下。ビード表面の凸凹の高低差は、溶接の長さまたはビード幅25mmの範囲で管理許容差2.5mm以下・限界許容差4mm以下
  • 道路橋示方書:ビード長さ25mmの範囲の高低差で3mmを超える凹凸があってはならない
  • すみ肉の余盛(JASS 6):管理許容差 0.4×脚長以下かつ4mm以下、限界許容差 0.6×脚長以下かつ6mm以下

どの基準も、ビード幅の大きさそのものではなく、余盛が高すぎないか・幅がそろっているかを見ています。アンダカットやオーバーラップなどの欠陥は、溶接欠陥の種類と原因で説明しています。

技能の競技会の採点の例

全国工業高等学校長協会の「高校生ものづくりコンテスト」溶接部門(JIS Z 3801の中板・裏当て金なし下向突合せN-2Fに準じた課題、板厚9mm・V形60°)の表面外観の採点では、ビード幅を最も広いところで測り、18mm以下は減点なし、18mmを超え20mm以下は2点減点、20mmを超えると4点減点です(2026年の課題)。これは競技会の採点基準で、JISの評価試験の判定基準ではありませんが、9mmの板のV形開先で仕上げのビード幅が18mm前後になることの目安になります。

ビード幅がそろわない・広がる原因

  • 振り幅が一定でない:両端の止める位置と時間がばらつくと、幅が波打つ。開先の縁を目印にして振る
  • 仕上げの前の層を盛りすぎた:開先の縁が見えなくなり、ビードが曲がる。前の層は開先面を約1mm残す
  • 開先幅を超えて振った:手ぶれでアンダカットや幅の不ぞろいが出やすい
  • 運棒が遅い・電流が高い:溶融池が広がって幅が広くなる。半自動溶接では、電圧が高いとビード幅が広くなる(半自動溶接のやり方)

溶接のビード幅についてよくある質問

ビード幅に決まりはありますか

ビード幅そのものを決めた共通の規格はありません。外観の基準(JASS 6など)では、ビード幅に応じて余盛の高さの上限が決まり、幅の不整(150mmの範囲で5mm以下など)が決まっています。仕事では図面と施工要領書の指定に従います。

ウィービングの振り幅はどのくらいですか

被覆アーク溶接の技能マニュアルでは心線径の約3倍程度以内、日鉄溶接工業のA-10のカタログでは棒径の2.5倍以内です。3.2mmの棒なら約8〜10mmです。

すみ肉のビード幅は脚長の何倍ですか

等脚なら約1.41倍(√2倍)です。脚長6mmなら約8.5mmです。

9mmの板の突合せのビード幅はどのくらいですか

開先角度60°・ルート間隔5mm・ルート面0なら、表面の開先幅が約15.4mmで、両側に約1mmずつ広げると約17.4mmです。開先の形が違えば幅も変わるので、式で計算してください。

TIG溶接のビード幅の目安はありますか

数値を決めた一次資料は、この記事では確認できませんでした。開先の幅や指定の脚長から必要な幅を決め、施工要領書の条件で溶接します。

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