溶接記号の見方矢の側と反対側、すみ肉・開先の寸法の読み方
溶接記号は、図面の上で「どこを、どんな形で、どれだけ溶接するか」を伝えるための記号です。矢・基線・記号・数字の組み合わせで書かれていて、読み方の決まりさえ分かれば、図面から溶接の場所と寸法を読み取れます。この記事では、日本の規格 JIS Z 3021:2016 にもとづいて、溶接記号の構成、矢の側と反対側の見分け方、基本記号、すみ肉溶接と開先溶接の寸法の読み方、よく使う補助記号までをまとめます。古い図面や海外の図面では書き方が違うこともあるので、図面の注記もあわせて確認してください。
溶接記号の構成と各部の名前
溶接記号は、次の部品でできています。
| 部分 | 役割 |
|---|---|
| 矢 | 溶接する継手を指す引出し線。先に矢じりが付きます |
| 基線 | 矢につながる水平な線。この線の上か下に記号と寸法を書きます |
| 基本記号 | 溶接の種類(すみ肉、V形開先など)を表す記号 |
| 寸法 | 脚長、開先深さ、溶接長さ、ルート間隔などの数字 |
| 補助記号 | 全周溶接、現場溶接、裏当て、仕上げの方法などを付け足す記号 |
| 尾 | 基線の端の「<」の形。溶接方法や材料などの補足を書きます。書くことがなければ省きます |
矢と基線の書き方
矢は、基線のどちらの端から出してもかまいません。基線は、原則として図面の下の辺と平行(水平)に引きます。下の辺と平行に引けないときに限り、右の辺と平行(縦向き)に引いてもよく、そのときは溶接記号ごと90°回した形になります。同じ溶接なら、1本の基線に矢を何本か付けてもかまいません。矢の先は、溶接する継手の線に当てます。
尾に書くこと
尾には、溶接方法、溶接材料、溶接姿勢、品質の等級など、記号だけでは表せない指示を書きます。溶接施工要領書(WPS)などの文書を指定するときは、尾を閉じた形にして中に番号を書く方法もあります。
矢の側と反対側の見分け方
基線の下は矢の側、上は反対側
溶接記号でいちばん大事な決まりが、記号を書く位置です。JIS Z 3021:2016 では、矢が指している側(矢の側)を溶接するときは、基本記号を基線の下に書きます。矢が指している面の反対側(反対側)を溶接するときは、基線の上に書きます。
T継手のすみ肉溶接なら、矢が当たっている側の角を溶接するのか、板の向こう側の角を溶接するのかが、記号の上下だけで変わります。上下を逆に読むと、溶接する場所を丸ごと間違えることになります。
両側を溶接するとき
両側を溶接するときは、基線の上と下の両方に記号を書きます。X形やK形の開先は、V形やレ形の記号を上下に組み合わせた形です。
矢を折って削る板を示す
レ形やJ形のように片方の板だけを削る開先では、どちらの板を削るかを示すために、矢を折って削る板に当てます(T継手を除く)。削る板が明らかなときや、どちらでもよいときは、折らなくてもかまいません。
点線がある溶接記号(ISOのSystem A)
JIS Z 3021:2016 は、国際規格 ISO 2553 の「System B」をもとにした規格で、基線は1本の実線です。ISO 2553 には、実線と点線の2本の線を使う「System A」という書き方もあり、こちらは実線の側に書いた記号が矢の側、点線の側に書いた記号が反対側を表します。海外の図面で点線付きの基線を見たら、System A の書き方だと考えて読みます。
溶接記号の基本記号一覧
| 記号の名前 | 溶接の形 |
|---|---|
| I形 | 板の端を削らずに突き合わせる溶接 |
| V形 | 両方の板の端を斜めに削り、V字の溝にして溶接 |
| レ形 | 片方の板の端だけを斜めに削って溶接 |
| U形・J形 | 溝の底を丸く削った開先。U形は両方、J形は片方の板を削ります |
| すみ肉 | 直角に交わる2枚の板の角を三角形に盛る溶接 |
| X形・K形・H形 | V形・レ形・U形を両側から行う溶接 |
| フレア | 丸い面と面の間のすき間を溶接(V形フレア・レ形フレア) |
| プラグ・スロット | 重ねた板の穴や長穴を埋める溶接 |
| スポット・シーム | 重ねた板を点や線で溶接(抵抗溶接など) |
| へり・肉盛 | 板のへりの溶接、表面に溶接金属を盛る溶接 |
記号は、開先の断面の形をそのまま小さくした形になっています。基線の下に書くときは、開先の底(ルート)の側が基線に接し、開いた側が下を向きます。V形なら、基線の下では「ハ」の字を上でつないだ形に見えます。すみ肉の三角形は、縦の辺を左側に書きます。
すみ肉溶接の寸法の読み方
脚長とのど厚
すみ肉溶接の大きさは、記号の左に書きます。数字だけなら脚長(溶接の三角形の、板に沿った辺の長さ)です。「6」なら脚長6mmです。脚長ではなく、のど厚で指定するときは、数字の前に「a」を付けて「a4」のように書きます。
脚長が左右で違う不等脚すみ肉は「6×10」のように2つの数字で書き、小さいほうの脚長を先に書きます。どちらの板の側が長いかは、図面で確かめます。
溶接長さ
記号の右に書くのが溶接長さです。「300」なら300mmだけ溶接します。長さが書いていないときは、継手の全長を溶接します。
断続溶接の書き方 L(n)−P
一定の間隔で飛び飛びに溶接する断続溶接は、記号の右に「L(n)−P」の形で書きます。Lは溶接1か所の長さ、nは溶接する個数、Pは溶接の中心どうしの間隔(ピッチ)です。「50(3)−150」なら、長さ50mmの溶接を、中心の間隔150mmで3か所行います。
両側を断続溶接するとき、両側の溶接の位置をそろえる並列断続は上下の記号を同じ位置に、互い違いにする千鳥断続は上下の記号をずらして書きます。
両側のすみ肉溶接
基線の上下に三角形を書き、それぞれに脚長を書きます。両側の寸法が同じときは、片側の寸法を省いてもよく、その場合は基線の上側に寸法を残します。ただし、並列断続・千鳥断続の溶接では、両側の寸法が同じでも片側を省いてはいけません。
開先溶接の寸法の読み方
完全溶込みと部分溶込み
開先溶接で、記号の左に寸法が書いていないときは、板の厚さの全部を溶かし込む完全溶込み溶接です。部分溶込み溶接のときは、記号の左に「開先深さ(溶接深さ)」の形で書きます。開先深さと溶接深さが同じときは、開先深さを省いて括弧の溶接深さだけを書いてもかまいません。
ルート間隔と開先角度
ルート間隔(突き合わせた板のすき間)は記号の中に、開先角度は記号の外(開いた側)に書きます。図の例は、ルート間隔2mm、開先角度60°のV形開先を、矢の側から完全溶込みで溶接する指示です。ルート面の高さやルート半径などは、尾に書きます。
開先記号の長さ
すみ肉溶接と同じく、記号の右に長さがなければ全長を溶接します。
よく使う補助記号
| 補助記号 | 意味 |
|---|---|
| 全周溶接(○) | 矢と基線の交わる所に丸。部材の周りをぐるりと一周溶接します |
| 現場溶接(旗) | 矢と基線の交わる所に旗。工場ではなく現場で溶接します |
| 裏溶接・裏当て溶接・裏波溶接 | 開先溶接の裏側の処理。基本記号と反対側に書きます |
| 裏当て(M、MR) | 裏当て材を使う。Mは残す、MRは溶接後に取り外す |
| 表面の形状 | 溶接の表面を平ら・凸・へこみに仕上げる指示 |
| 仕上げの方法 | C(チッピング)、G(グラインダ)、M(切削)、P(研磨) |
溶接記号を読むときに間違えやすいポイント
基線の上下を逆に読む
いちばん多い間違いです。基線の下が矢の側、上が反対側です。点線付きの基線(System A)の図面では、実線と点線のどちら側に記号があるかで読みます。
長さのない記号を部分溶接と思い込む
長さが書いていない記号は全長の溶接です。部分的に溶接するなら、長さや断続の寸法が書いてあります。
開先の寸法の書き忘れと完全溶込み
開先記号の左に寸法がないと、完全溶込みの指示になります。部分溶込みのつもりで寸法を書き忘れた図面もありえるので、構造上の意味から見ておかしいと感じたら、設計者に確認します。
溶接記号についてよくある質問
基線の上と下、どちらが矢の側ですか
JIS Z 3021:2016 では、基線の下に書いた記号が矢の側、上に書いた記号が反対側です。
矢は基線の右から出しても左から出してもいいですか
どちらの端から出してもかまいません。矢の向きで意味は変わりません。
すみ肉溶接の記号に長さが書いていないときは
継手の全長を溶接する指示です。
溶接記号の最新のJISはどれですか
JIS Z 3021:2016 です。2010年版から、国際規格 ISO 2553 の System B に合わせる形で改正されました。古い図面は前の版の決まりで書かれていることがあるので、図面の作成年や注記も確かめます。
社内の図面で記号の書き方が違うときは
会社や業界によっては、社内の基準や、発注者の仕様書で書き方を決めていることがあります。記号の意味に迷ったときは、推測で溶接せず、図面を書いた人に確認してください。









