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配管・溶接

アーク溶接のやり方アークの出し方・棒の角度・電流の目安

アーク溶接(被覆アーク溶接)は、溶接棒と母材のあいだに出したアークの熱で、棒と母材を溶かしてつなぐ溶接です。この記事では、中小企業総合事業団(現 中小企業基盤整備機構)が日本溶接協会の協力で作ったマニュアル「被覆アーク溶接 実技とそのポイント」と、溶接棒・溶接機メーカーの資料、労働安全衛生規則などをもとに、準備からアークの出し方、棒の角度と運棒、ビードのつなぎ方、電流の目安、安全の決まりまでをまとめます。

溶接の前の準備

  • 母材の溶接する部分と、そのまわり約10mmの黒皮(酸化スケール)や汚れを、グラインダーで落とす。油・水分・ペイント・亜鉛めっきが残っていると、ブローホールの原因になる。
  • 溶接棒は、銘柄ごとに決められた温度と時間で乾燥させる(例:イルミナイト系は70〜100℃で30〜60分、低水素系は300〜350℃で30〜60分)。
  • 母材側のケーブル(アース)は、クランプでしっかり留め、溶接する場所のできるだけ近くにつなぐ。母材に巻き付けるような接続は、発熱や火花、感電の原因になる。
  • 電流を溶接棒の適正範囲に合わせる。慣れないうちは、クランプメーターなどで実際の電流を確かめる。

アークの出し方

アークを出す方法は2つあります。

方法やり方
タッピング法棒の先で母材を軽くたたき、跳ね上がるときにアークを出す。ドラムをスティックでたたく動きに似ている
ブラッシング法棒の先を母材の面に沿って素早くこすり、アークを出す。マッチをする動きに似ている

そっと触れると、棒の先が母材にくっついて(融着して)アークが出ません。アークが出たら、棒の先と母材の距離を約2〜4mmと短く保って、溶接を始める位置へ移ります。

アーク長と音

マニュアルでは、下向きのビードでは被覆剤の先が溶融池に触れるくらいの短いアーク長がポイントとしています。アークが長すぎると、スパッタが増え、溶け込みが浅くなり、欠陥が出やすくなります。

  • 正常なアーク:「ジー」「パチパチ」と小さく続く音
  • 長すぎるアーク:「バチバチ」と途切れる音、さらに長いとアークがふらついて「ボー」という音が混じる

棒の角度と運棒

姿勢棒の角度の目安
下向(ビード)鉛直から進行方向に約10〜20度傾ける
水平すみ肉下板に対して約45〜50度、溶接線の進行方向に対して約70〜80度
立向(上進)上向きに約75度
上向母材に対して約90度前後

角度はマニュアルの目安です。溶融したスラグが棒の先に近づいてきたときは、棒の傾きを大きくして、アークの力でスラグを後ろへ押しやります。スラグから逃げるように速度を上げると、溶け込み不足やスラグ巻込みの原因になります。

運棒の速さと幅

  • ビードの幅が心線の径の約2.5倍以下なら、進行方向にだけ動かすストリンガ運棒にする。
  • 広いビードは、左右に振るウィービング運棒にする。振り幅は心線の径の約3倍以内(メーカーによっては2.5倍以内)とし、両端で少し止める。
  • 速さの目安は「ビードの長さ ÷ 溶けた棒の長さ」で、ストリンガ運棒なら約0.6〜0.8。

ビードのつなぎ方とクレーター処理

ビードをつなぐ(バックステップ法)

  1. 棒が短くなってアークを切ったら、素早く棒を替える。
  2. 前のビードの終わり(クレーター)のスラグを取る。
  3. クレーターより約10〜20mm先でアークを出し、アークを短くしたまま素早くクレーターまで戻る。
  4. クレーターをなぞるように運棒して溶融池を作り直し、そのまま溶接を続ける。

低水素系の溶接棒は、アークを出した部分にブローホールが出やすいので、マニュアルでは、この方法を必ず使うことを勧めています。

終わりのクレーター処理

ビードの終わりでそのままアークを切ると、くぼみ(クレーター)ができ、割れの原因になることがあります。終わりの位置で進むのを止め、アークを何回か断続させてくぼみを埋めるか、アークを短くしたまま溶融池の上で小さく回してから切ります。

溶接棒の径と電流の目安

電流の適正範囲は、溶接棒の銘柄と径、溶接姿勢で決まっています。代表例として、神戸製鋼のB-17(イルミナイト系)の推奨電流を示します。

棒径下向立向・上向
2.6mm50〜85A40〜70A
3.2mm80〜130A60〜110A
4.0mm120〜180A100〜150A
5.0mm170〜250A130〜200A

立向・上向は、下向より低い範囲になっています。数値は銘柄ごとに違うので、使う溶接棒の箱やカタログの適正電流を確かめてください。溶接棒の種類と記号は溶接棒の種類で説明しています。

溶接姿勢の記号

JIS Z 3011の記号姿勢従来の記号
PA下向F
PB水平すみ肉HF
PC横向H
PE上向OH
PF立向上進VU
PG立向下進VD

立向の下進は、まっすぐ動かすだけで平らなビードが作りやすい一方で、溶け込みが浅く、融合不良やスラグ巻込みが出やすいとされています。下進ができるかどうかは溶接棒によって違い、カタログに下進の電流が書かれていない銘柄もあります。

安全のための決まり

  • アーク溶接の業務は特別教育が必要です(労働安全衛生規則第36条第3号)。学科11時間以上・実技10時間以上です。
  • ホルダーは、絶縁と耐熱性のあるものを使います(同第331条)。
  • 狭い場所や、高さ2m以上で鉄骨などに触れるおそれのある場所で交流アーク溶接をするときは、自動電撃防止装置を使います(同第332条)。
  • 遮光保護具は電流に合った番号を使います。JIS T 8141(2016年版)の参考表では、被覆アーク溶接で75〜200Aなら遮光度番号9〜11、200〜400Aなら12〜13です。
  • 溶接ヒュームは特定化学物質障害予防規則の対象で、呼吸用保護具の使用やフィットテストなどが決められています。

資格や講習の内容は溶接の資格の種類で説明しています。

よくある失敗と原因

失敗主な原因
アンダーカットアークが長い、電流が高い、ウィービングの両端で止まらない
オーバーラップ電流が低い、溶接速度が遅い
スラグ巻込み電流が低い、運棒が速い、アークが長い、スラグの取り残し
ブローホール母材の油・水分・さび、溶接棒の吸湿、アークが長い
棒が母材にくっつくアークを出すときに、棒の先をそっと触れている

欠陥の種類と対策は溶接欠陥の種類と原因でくわしく説明しています。

アーク溶接のやり方についてよくある質問

アークがうまく出ません

棒の先で母材を軽くたたくか、マッチをするように素早くこすって出します。そっと触れると、棒の先が母材にくっついてアークが出ません。

アーク長はどれくらいですか

マニュアルでは、アークを出したあと約2〜4mmに保ち、下向では被覆剤の先が溶融池に触れるくらい短くするのがポイントとしています。

3.2mmの溶接棒の電流は

銘柄で違います。神戸製鋼のB-17なら、下向で80〜130A、立向・上向で60〜110Aです。

アーク溶接に資格はいりますか

仕事でアーク溶接をするには、アーク溶接等の特別教育(学科11時間以上・実技10時間以上)が必要です。

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