溶接の開先角度とルート間隔各部の名前と建築鉄骨の標準の例
開先(かいさき)は、突合せ溶接などで、溶接金属をしっかり溶かし込むために板の端に設ける溝です。開先角度やルート間隔が小さすぎると溶け込み不足、大きすぎると溶接の量が増えてひずみの原因になります。この記事では、JIS Z 3001の用語にもとづく開先の各部の名前と、建築鉄骨でよく使われる開先角度とルート間隔の例、許容差、配管の管継手の開先をまとめます。開先の形は、溶接方法・板厚・溶接姿勢や設計の条件で決まるので、実際の工事では設計図書と溶接の施工要領に従ってください。
開先の各部の名前
| 用語 | 意味(JIS Z 3001-1の定義にもとづく) |
|---|---|
| 開先(グルーブ) | 溶接する母材の間に設ける溝 |
| 開先角度 | 両方の母材の斜面がつくる角度 |
| ベベル角度 | 片方の母材の斜面の角度 |
| 開先深さ | 開先の溝の深さ |
| ルート | 溶接の底の部分 |
| ルート面 | 開先の底に残す平らな面(ルートフェイス) |
| ルート間隔 | 母材どうしのすき間(ギャップ) |
両方の板を削るV形では、開先角度はベベル角度の2倍になります。片方だけ削るレ形では、開先角度とベベル角度は同じです。
開先の種類
JIS Z 3001-1では、開先の標準の形として、I形・V形・X形・レ形・K形・J形・両面J形・U形・H形が挙げられています。溶接記号の基本記号も、この開先の形に対応しています。
建築鉄骨の開先角度とルート間隔の例
国土交通省の公共建築工事標準仕様書では「開先の形状は、特記による」とされていて、仕様書そのものには数値の標準は載っていません。建築鉄骨では、日本建築学会のJASS 6や、日本建設業連合会(日建連)の溶接標準などが目安として使われています。次の表は、日建連の溶接標準(2018年版)の完全溶込み溶接の開先から、代表的なものを抜き出したものです(ガスシールドアーク溶接・被覆アーク溶接用)。
| 開先 | 裏側 | 開先角度 | ルート間隔 | ルート面 |
|---|---|---|---|---|
| レ形 | 裏当て金 | 35° | 7mm | 2mm以下 |
| レ形 | 裏当て金 | 30°(ガスシールドアーク溶接のみ) | 7mm | 2mm以下 |
| V形 | 裏当て金 | 45° | 6mm | 2mm以下 |
| V形 | 裏当て金 | 35° | 9mm | 2mm以下 |
| V形 | 裏はつり | 60° | 0 | 2mm |
| レ形 | 裏はつり | 45° | 0 | 2mm |
板厚6mm以上の場合の値です。板厚16mm以上では、両側から溶接するX形やK形の開先も使われます。
板厚6mm未満ではI形開先が使われます。日建連の溶接標準では、裏当て金ありはルート間隔を板厚と同じ(G=T)、裏はつりは板厚の3分の1(G=T/3)としています。なお、同じ標準の中でも、構造図に書かれたことはこの標準図より優先するとされています。
開先角度とルート間隔の関係
表を見ると、同じV形でも、開先角度を45°から35°に小さくすると、ルート間隔は6mmから9mmに広くなっています。開先角度を小さくすると溶接の量は減りますが、溶接棒やトーチが底まで届きにくくなるので、ルート間隔を広げて溶け込みを確保します。開先角度とルート間隔は組み合わせで決まっていると考えます。
裏当て金と裏はつり
裏当て金を使う開先は、ルート間隔をあけて裏側に鋼板を当て、片側から完全溶込み溶接をします。裏はつりの開先は、ルート間隔を0にして表から溶接したあと、裏側を削って(はつって)から裏側も溶接します。
開先角度とルート間隔の許容差
日本建築学会の鉄骨精度測定指針(2018年版)では、開先の許容差が決められています(日建連のQ&A資料で確認)。
| 項目 | 管理許容差 | 限界許容差 |
|---|---|---|
| 開先角度(35°以上) | −2.5°以上 | −5°以上 |
| 開先角度(35°未満) | −1°以上 | −2°以上 |
| ルート間隔(ガスシールド・セルフシールドアーク溶接、35°以上) | −2mm以上 | −3mm以上 |
| ルート間隔(同、35°未満) | −1mm以上 | −2mm以上 |
開先角度が小さい30°開先は、許容差が厳しくなっています。30°開先を使うには、工事監理者の承認が必要とされています。
配管の管継手の開先
溶接式の管継手(エルボ・チーズなど)の端は、あらかじめ開先加工(ベベルエンド)されています。メーカーのカタログ(ベンカン機工)では、厚さ22.4mm以下の継手のベベル角度は32.5°±2.5°、ルート面は1.6±0.8mm(FSGP・PY400の製品は2.0±1.2mm)です。同じ角度の管と突き合わせると、V形の開先角度は約65°になります。
配管の突合せ溶接のルート間隔は、管の太さ・厚さ・溶接方法や会社の施工要領で決まるので、施工要領書の値に従います。
開先で起きやすい不具合
- ルート間隔が狭すぎる・ルート面が大きすぎる:溶け込み不足になりやすい。
- ルート間隔が広すぎる:溶け落ちや、溶接の量の増加によるひずみの原因になる。
- 開先角度が小さすぎる:溶接棒やトーチが底まで届かず、融合不良になりやすい。
溶接の前には、すき間・食い違い・ルート間隔・開先角度・ルート面を確かめます。公共建築工事標準仕様書でも、溶接前にこれらを確認することが決められています。
組立溶接(仮付け)は、原則として開先の中には行いません。やむを得ず開先の中に行うときは、本溶接のあとの品質を確保できる方法で行うとされています(公共建築工事標準仕様書 令和7年版 7.6.5)。
開先とルート間隔についてよくある質問
開先角度とベベル角度の違いは
開先角度は両方の斜面がつくる角度、ベベル角度は片方の斜面の角度です。V形なら開先角度はベベル角度の2倍、レ形なら同じです。
レ形開先のルート間隔はいくつですか
日建連の溶接標準では、裏当て金を使うレ形35°でルート間隔7mmです。ただし、実際の値は設計図書や溶接の施工要領で決まります。
ルート面は何のためにありますか
開先の底を少し平らに残すことで、溶け落ちを防ぎ、底の位置をそろえやすくします。
開先の加工方法は
公共建築工事標準仕様書では、開先の加工は自動ガス切断または機械加工とされています。









