溶接欠陥の種類と原因アンダーカット・ブローホール・割れの対策
アンダーカットやブローホールなどの溶接欠陥は、溶接部の強度を下げたり、割れのきっかけになったりします。欠陥の多くは、電流・溶接速度・運棒のしかた・材料の乾燥や開先の汚れといった、溶接の条件から起こります。この記事では、JIS Z 3001-4の定義にもとづく主な溶接欠陥の種類と、日本溶接協会などの資料にもとづく原因と対策をまとめます。なお、JISでは「アンダカット」「オーバラップ」と長音なしで書きます。
溶接欠陥とは
JIS Z 3001-4では、理想的な溶接部からずれている部分を「溶接不完全部」、そのうち許されないものを「溶接欠陥」と呼んでいます。どこまでが許されるかは、製品の規格や仕様書、検査基準で決まります。
主な溶接欠陥の種類
| 欠陥 | JIS Z 3001-4の定義 |
|---|---|
| アンダカット(アンダーカット) | 母材又は既溶接の上に溶接して生じた止端の溝 |
| オーバラップ(オーバーラップ) | 溶接金属が止端で母材に融合しないで重なった部分 |
| ブローホール | 溶接金属中に生じる球状の空洞 |
| ピット | 溶接部の表面まで達し、開口した気孔 |
| 溶込不良 | 設計溶込みに比べ実溶込みが不足していること |
| 融合不良 | 溶接境界面が互いに十分に溶け合っていないこと |
| 溶接割れ | 冷却又は応力の影響で発生する固相の局部破壊による不連続部 |
| スラグ巻込み | 溶接金属に巻き込まれたスラグ |
アンダーカットの原因と対策
原因
電流が高すぎたり、溶接速度が速すぎたりして、アークでえぐられた母材の部分を、溶けた金属(溶融プール)が埋めきれないと、止端に溝が残ります。ウィービング(運棒の振り)の幅が大きすぎても起こります。
対策
- 電流を下げ、溶接速度も下げる。アーク電圧はやや低めにする。
- アーク長を長くしすぎない。
- ウィービングの幅を大きくしすぎない。
オーバーラップの原因と対策
溶接速度が遅すぎたり、溶けた金属がアークより先に流れたりすると、あふれた溶接金属が母材を溶かさずに重なります。対策は、溶融金属を先行させないようにし、電流を下げるか溶接速度を上げることです。すみ肉溶接では、狙う位置を下板側にし、トーチや棒の角度を立板から35°〜55°程度にすると防ぎやすいとされています。
ブローホール・ピットの原因と対策
原因
窒素・一酸化炭素・水素などのガスや、亜鉛などの金属の蒸気が溶接金属に取り込まれて起こります。内部に残ったものがブローホール、表面に開いたものがピットで、同じ現象です。
- シールドガスの不足や風によるシールド不良
- 開先面のさび・油・水分、めっきやプライマー
- 溶接棒の吸湿(乾燥不足)
対策
- 開先のさび・油・水分を取り除く。
- 風が当たる場所では風よけをして、シールドガスの流量を確かめる。
- 溶接棒は決められた条件で乾燥する。低水素系の溶接棒は、神戸製鋼のカタログではLB-52などで使う前に300〜350℃で30〜60分乾燥するとされています。銘柄によっては350〜400℃で60分などもあるので、箱やカタログの表示に従います。
- 低水素系の溶接棒では、アークスタートの部分にブローホールが出やすいので、後戻り法や捨て金法でアークを出す。
割れの原因と対策
低温割れ
溶接が終わって冷えてから起こる割れで、溶接後2〜3日以内に出ることが多いとされています。硬くなった組織、水素、引張応力の3つがそろったときに起こります。対策は、予熱や直後熱を行うこと、溶接材料を乾燥して水素を減らすことです。
公共建築工事標準仕様書(令和7年版)では、作業場所の気温が−5℃未満なら溶接しない、−5℃以上5℃以下なら溶接線から100mm程度の範囲を加熱してから溶接する、とされています。雨や雪で母材がぬれているときや、溶接に影響する風があるときも、適切な対策がなければ溶接しません。
高温割れ
溶接中から溶接直後の高温のうちに起こる割れです。成分のかたよりと、固まるときの収縮の応力が原因です。対策は、不純物の少ない材料を使う、溶接速度を下げる、入熱を小さくする、などです。
クレータ割れ
溶接の終わりのくぼみ(クレータ)に起こる割れです。溶接の終わりは、クレータを埋めてからアークを切るようにします。
融合不良・溶込不良・スラグ巻込みの対策
- 融合不良:電流・電圧が足りない、溶接速度が速すぎることが原因です。電流・電圧を上げて速度を下げ、溶融金属を先行させない条件にします。
- 溶込不良:開先の形(ルート間隔・ルート面)が合っていない場合や、電流が足りない場合に起こりやすくなります。開先の寸法を確かめます。
- スラグ巻込み:多層盛りで、前のパスのスラグが残っていると起こります。パスごとにスラグをしっかり取り除き、運棒を適正にします。
溶接欠陥についてよくある質問
アンダーカットとオーバーラップの違いは
アンダーカットは止端に溝ができる欠陥、オーバーラップは溶接金属が母材に融合せずに重なる欠陥です。一般に、溶接速度が速すぎるとアンダーカット、遅すぎるとオーバーラップになりやすいとされています。
ブローホールは外から見えますか
ブローホールは溶接金属の内部の空洞なので、外観では見つけにくく、放射線透過試験などで調べます。表面に開いたものはピットと呼びます。
溶接欠陥はどこまで許されますか
製品の規格、仕様書、検査基準で決まります。建築鉄骨なら、設計図書や適用される基準で確かめます。
建築鉄骨では、国の告示(平成12年建設省告示第1464号)で、0.3mmを超えるアンダーカットがあってはならないとされています。ただし、アンダーカットの長さの合計が溶接部全体の長さの10%以下で、断面が鋭角でなければ、深さ1mm以下まで認められます。









