アーチ開口の作り方幅と高さから半径を出す計算・下地の型板・石膏ボードの曲げ方
アーチ開口は、壁の開口の上を円弧にした納まりで、内装大工が下地の型から作ることが多い仕事です。この記事では、開口の幅とアーチの高さから円弧の半径を出す計算、下地の型板の作り方、石膏ボードをどこまで曲げられるか、濡らす・切れ目を入れるなど小さい半径の曲げ方を、石膏ボードメーカーのカタログや技術資料、米国石膏協会の施工基準(GA-226)をもとにまとめます。
アーチの形は「幅」と「高さ」で決まる
アーチ開口の円弧は、開口の幅(弦の長さ)と、アーチの立ち上がりの高さ(矢高)がわかれば1つに決まります。半径は次の式で出せます。
半径 R =(幅² ÷ 4 + 矢高²)÷(2 × 矢高)
| 幅 | 矢高 | 半径 | 弧の長さ |
|---|---|---|---|
| 780 | 390 | 390.0 | 1,225.2 |
| 780 | 150 | 582.0 | 854.8 |
| 900 | 200 | 606.3 | 1,014.2 |
| 1,690 | 300 | 1,340.0 | 1,828.6 |
単位はmmで、展開図ラボで計算した値です。矢高が幅のちょうど半分なら半円(1行目)で、半径は幅の半分になります。矢高を低くするほど半径は大きくなり、ゆるやかなアーチになります。弧の長さは、アーチの下面に張るボードや見切り材の長さの目安になります。
幅と矢高を入れるだけで半径と原寸の型板を出せる円弧の型板ツールを使えば、手で計算しなくても、型板をそのまま印刷できます。
下地の型板は「仕上がりの半径+ボードの厚さ」で作る
アーチの下面は、下地の上に石膏ボードを張って仕上げます。ボードは下地の下側(開口の内側)に付くので、下地の円弧の半径は、仕上がりの半径よりボードの厚さぶん大きくします。
- 仕上がりの半径582mm、ボード12.5mmなら、下地の半径は582+12.5=594.5mm
- 2枚張りなら、2枚分の厚さを足す
同じように、アーチの左右の壁面に使う型(円弧に切った合板など)は、壁の仕上がり面からボードの厚さぶん下がった位置に付けます。ツールで型板を出すときは、下地の半径(仕上がり+ボード厚)で出すか、仕上がりの半径で出した型板の内側をボード厚だけ詰めて切ります。
木下地の組み方の例
- 開口の幅と矢高から半径を出し、下地用の円弧の型板を原寸で作る。
- 型板を当てて、合板などをアーチの形に左右2枚切り出す。
- 左右の壁の下地に、切り出した円弧の材を取り付ける。
- 2枚の円弧の間に、短い下地材を円弧に沿って細かい間隔で入れ、ボードを留める面をつくる。
- 下地の円弧が左右でずれていないか、型板を当てて確かめてからボードを張る。
この手順は一般的な作り方の例で、下地の材料や間隔は現場の仕様に合わせてください。曲面にボードを張るときの下地の間隔は、次の節のとおり、平らな壁より細かくするのが基本です。
軽量鉄骨(LGS)下地の場合
R加工品を扱う能重製作所の資料では、スタッドはR加工できず、ランナーを円弧に曲げて使うとしています。切込みを入れて加工したR加工ランナーで、内側の半径100mmからとしています。現場で曲げるか、工場でR加工したランナーを使うかは、半径と数量で決めます。
石膏ボードはどこまで曲げられるか
普通の石膏ボードをそのまま曲げる場合
| ボード厚 | 曲げ半径の目安 |
|---|---|
| 9.5mm | 1,500mm |
| 12.5mm | 2,000mm |
チヨダウーテの総合カタログにある目安で、長さ1,820mmのボードを、そのまま下地に添わせて矯正しながら留め付ける場合の値です。上の計算例でいうと、幅1,690mm・矢高300mm(半径1,340mm)でも、9.5mmのボードをそのまま曲げるには目安より小さい半径です。一般的なアーチ開口の下面は、これよりずっと小さい半径になるので、そのままでは曲がりません。
濡らして曲げる・切れ目を入れる
米国石膏協会の施工基準(GA-226-2019)では、次の方法を示しています。
- 濡らして曲げる:張ったときに引っ張られる側の面を濡らし、10〜15分なじませてから曲げ、24時間以内に乾かす。
- 切れ目を入れる:アーチの下面のような小さい半径では、濡らすか、裏紙に約25mm間隔で切れ目を入れて芯を割って曲げる。
- 下地の間隔:最小の半径で曲げるときは、下地の間隔を150mm以下にする。
- 曲げる向き:乾いたボードは長手方向の方が小さい半径まで曲がり、厚いボードは短手方向に乾いたまま曲げない。
これは米国の基準で、板厚も日本のボードと少し違います。国内メーカーの普通の石膏ボードで、濡らす方法や切れ目を入れる方法の保証値を示した資料は、確認できた範囲では見つかりませんでした。実際に使うボードのメーカーの資料を確かめてください。
小さい半径には曲面用の薄いボードを使う
| 製品 | 厚さ | 曲げ半径 |
|---|---|---|
| グラスロック | 5mm | 1,000mm |
| エフジーボード 乾式 | 5mm | 800mm |
| エフジーボード 乾式 | 8mm | 1,200mm |
| エフジーボード 湿式 | 5mm | 150mm〜 |
吉野石膏(グラスロック)とエーアンドエーマテリアル(エフジーボード)の資料の値です。エフジーボードの湿式は面下地の場合で、同社の資料では、胴縁を303mm以下にすること、目地の位置の下地はダブルにすること、角からでなく中間から留めること、濡らした板は2〜3日乾かしてからパテをすることを挙げています。
ほかに、チヨダウーテは工場で曲面に加工した石膏ボード(R50〜)を扱っていて、「アール開口部」にも対応するとしています。数量が多いときや、きれいな曲面を出したいときの選択肢になります。
アーチの出隅と仕上げ
アーチの縁(壁の面とアーチの下面が出会う角)は、平らな出隅と同じコーナー材では円弧に沿いません。GA-226では、曲面には専用のコーナー材を使うとしていて、米国のメーカーには、切り込みで曲げられる樹脂製のアーチ用コーナービードがあります。国内で使うときは、取り扱っている建材の中から曲面に対応したものを選んでください。
エフジーボードの資料では、ひびや肉やせを防ぐために、シーラーを塗ること、面取りした突き付けと寒冷紗でジョイントを処理することを挙げています。
よくある失敗
下地の半径を仕上がりの半径で作ってしまう
ボードの厚さぶん、仕上がりのアーチが小さく(低く)なります。下地の型板は、仕上がりの半径にボードの厚さを足して作ります。
普通のボードを無理に曲げて割る
普通の石膏ボードをそのまま曲げられるのは、半径1.5〜2m程度までが目安です。アーチの下面は濡らす、切れ目を入れる、曲面用の薄いボードや加工品を使うなど、半径に合った方法を選びます。
濡らしたボードにすぐパテをする
エフジーボードの資料では、濡らした板は2〜3日乾かしてからパテをするとしています。乾ききる前にパテをすると、ひびや不具合の原因になります。
左右の円弧がずれる
左右の型を別々に作ると、アーチがねじれます。1枚の型板で左右とも切り出し、取り付けたあとも同じ型板を当てて確かめます。
アーチ開口の作り方についてよくある質問
アーチの半径はどう決めますか
開口の幅と、アーチの立ち上がりの高さ(矢高)を先に決めると、半径は計算で決まります。半径=(幅²÷4+矢高²)÷(2×矢高)です。
半円のアーチにするには
矢高を開口の幅の半分にします。幅780mmなら矢高390mmで、半径は390mmです。
石膏ボードは何mmまで曲げられますか
チヨダウーテのカタログの目安では、そのまま曲げる場合、9.5mmで半径1,500mm、12.5mmで2,000mmです。それより小さい半径は、濡らす・切れ目を入れる・曲面用ボードを使うなどの方法になります。
アーチの下面に張るボードの長さは
弧の長さが目安です。幅900mm・矢高200mmなら、半径606.3mm、弧の長さは約1,014mmです。









