銅管のロウ付けのやり方ろう材の種類・窒素ブロー・温め方のコツ
銅管のロウ付けは、継手と管のすき間に溶けたろうを流し込んでつなぐ方法です。エアコンなどの冷媒配管では、ろうの種類、窒素の流し方、温め方を間違えると、漏れや機械の故障につながります。この記事では、JISと、日本銅センター・空調メーカーの施工資料をもとに、ろう材の種類と温度、フラックスの要否、差し込み深さとすき間、窒素を流す理由と圧力、ロウ付けの手順、よくある失敗、資格と気密試験をまとめます。細かい条件は機器や継手で違うので、機器の据付説明書も必ず確かめてください。
銅管のロウ付けに使うろう材の種類
銅管のロウ付けで主に使うのは、りん銅ろう(記号BCuP)と銀ろう(記号BAg)です。どちらも溶ける温度が450℃以上の「硬ろう」で、450℃未満の「はんだ(軟ろう)」とは別のものです。
| 記号 | 主な成分 | 固相線 | 液相線 | ろう付温度 |
|---|---|---|---|---|
| BCuP-2 | 銅・りん | 約710℃ | 約795℃ | 735〜845℃ |
| BCuP-3 | 銅・りん・銀5% | 約645℃ | 約815℃ | 720〜815℃ |
| BCuP-5 | 銅・りん・銀15% | 約645℃ | 約800℃ | 705〜815℃ |
| BAg-7 | 銀56%・銅・亜鉛・すず | 約620℃ | 約650℃ | 650〜760℃ |
数値はJIS Z 3264(りん銅ろう)とJIS Z 3261(銀ろう)の参考値です。固相線は溶け始める温度、液相線は全部溶ける温度です。銀ろうは、りん銅ろうより低い温度で溶けます。
フラックスがいる場合といらない場合
| つなぐもの | ろう材 | フラックス |
|---|---|---|
| 銅と銅 | りん銅ろう | いらない |
| 銅と黄銅など銅合金 | りん銅ろう・銀ろう | いる |
| 鉄・ステンレス | 銀ろうなど | いる(りん銅ろうは使えない) |
りん銅ろうは、中のりんが銅の酸化膜を取る働きをするので、銅と銅ならフラックスなしでつなげます。鉄やステンレスにりん銅ろうを使うと、りんと鉄が化合してもろくなるので使えません(日本ウエルディング・ロッド、金属溶材の資料)。
エアコンの冷媒配管では、パナソニックもダイキンも、フラックスを使わず、フラックスのいらないりん銅ろうを使うよう指示しています(ダイキンはBCuP-2を指定)。フラックスの塩素は配管の腐食、ふっ素は冷凍機油の劣化の原因になるためです。
差し込み深さとすき間
ロウ付けでは、管と継手の細いすき間にろうを浸透させます。管の差し込みが浅いと、ろうの入る長さが足りません。三菱重工と三菱電機の施工資料では、管の外径ごとに最小の差し込み深さを次のように示しています。
| 管の外径 | 最小の差し込み深さ |
|---|---|
| 5mm以上8mm未満 | 6mm |
| 8mm以上12mm未満 | 7mm |
| 12mm以上16mm未満 | 8mm |
| 16mm以上25mm未満 | 10mm |
| 25mm以上35mm未満 | 12mm |
| 35mm以上45mm未満 | 14mm |
すき間は、どちらの資料でも、銀ろうでは0.05〜0.1mm程度のときに接合の強さが最も高くなるとしています。冷媒用の継手の差し込み深さは、JIS B 8607(冷媒用フレア及びろう付け管継手)でも管の外径ごとに決められています。たとえば9.52mmの管用の継手では、おす側の差込みの最小深さが8mm、めす側が7mmです。
窒素を流しながらロウ付けする理由
冷媒配管をそのまま加熱すると、管の内側に酸化膜(酸化スケール)ができます。三菱電機の施工マニュアルでは、このスケールが電磁弁やキャピラリチューブ、圧縮機の油の通り道などに詰まる原因になるとしています。そこで、管の中の空気を窒素に入れ替えながらロウ付けします。これを「窒素置換」や「窒素ブロー」と呼びます。
| 出典 | 窒素の目安 |
|---|---|
| 三菱電機 | 0.02MPa以下。必ず減圧弁を使う |
| 三菱重工 | 流量0.05m³/h、または減圧弁で0.02MPa以下 |
| ポリテクセンター福井の教材 | 0.01〜0.02MPa程度(出口に手を当てて流れを感じる程度) |
- 窒素の出口はふさがない。中の圧力が上がると、ろう付け部にピンホールができて漏れの原因になる。
- 配管が手でさわれる程度に冷えるまで、窒素を流したままにする。
- 窒素の代わりに酸素・炭酸ガス・フロンを使わない。市販の酸化防止剤も使わない(三菱電機。管が腐食する「蟻の巣状腐食」の原因になる)。
- 冷媒や窒素を封じ込めて密閉した状態でロウ付けしない。管が破裂するおそれがある(日本銅センター)。
銅管のロウ付けのやり方
- パイプカッターで管を直角に切る。金のこやグラインダーは切り粉が中に残るので使わない。
- リーマーなどでバリを取る。削り粉が入らないよう、管の口を下に向けて行う。
- 管の外面と継手の内面を研磨布などで磨き、汚れと酸化膜を取る。
- 管を継手の奥まで差し込む。拡管するときは専用の工具を使う。
- 窒素を流し始める。近くの弁や保温材は、濡れタオルなどで熱から守る。
- 管と継手をぐるりと交互に温めて予熱する。
- ろう付けの温度になったら、ろう棒の先を継手の口に当て、母材の熱でろうを溶かして流し込む。
- 炎を遠ざけながら、継手の口にろうの盛り上がり(フィレット)を作る。
- ろうが固まるまで動かさない。冷えたら、ピンホールやろうの回り不足がないか見て確かめる。
温め方のポイント
日本銅センターの施工マニュアルでは、次のように書かれています。
- 予熱は600〜650℃程度、銅管の表面が暗い赤色になるまで。管と継手の温度差を小さくする。
- BCuP-3の場合、銅管の表面が赤褐色から淡い赤色(720〜815℃)になったらろうを流す。
- ろうを炎で直接溶かさない。母材から伝わる熱で溶かす。
- 継手の温度を銅管より高くして、差し込まれた銅管の温度も確保する。ろうを奥まで浸透させるときは、継手を重点的に温める。
三菱電機のマニュアルでは、ロウ付けは下向きか横向きで行い、上向きのロウ付けはしないよう指示しています。
冷やし方
冷やし方は資料によって書き方が違います。三菱重工は、加熱のすぐ後に水をかけると配管が劣化する場合があるとして、水をかけないことを勧めています。日本銅センターの冷媒用銅管の施工マニュアルでは、高温になった配管を濡れタオルなどで冷やすとしています。どちらの場合も、ろうが固まる前に動かしたり振動を与えたりしないことが大切です。
ロウ付けのよくある失敗と原因
| 失敗 | 主な原因 |
|---|---|
| ろうが奥まで入らない・巣ができる | 予熱が足りない。炎の先でろうを直接溶かした |
| ろうが垂れる・管が溶ける | 加熱しすぎ |
| ピンホール | 窒素の出口をふさいで、中の圧力が上がった |
| 管の内側の酸化スケール | 窒素を流さずに加熱した。加熱の範囲が広すぎた |
| ろう付け部の割れ | ろうが固まる前に動かした・振動が伝わった |
| ろう付け部の腐食 | フラックスや酸化防止剤が残った。硫黄分の多い場所でりん銅ろうを使った |
出典は日本銅センター、三菱電機、三菱重工の資料です。硫黄を含むガスが多い場所では、りん銅ろうが硫黄と反応して漏れの原因になるので、銀ろうなど別のろう材にするよう三菱重工は書いています。
ロウ付けに資格はいるか
酸素とアセチレン、酸素とプロパンのように、可燃性ガスと酸素を使って金属を加熱する業務は、ガス溶接技能講習などの資格がないと行えません(労働安全衛生法施行令第20条第10号)。18歳未満の人は、ガス溶接の業務に就けません。
厚生労働省の委託事業で作られたガス溶接技能講習の補助テキストでは、「酸素を用いないガストーチによるろう付けは、特に資格の必要はない」としています。ただし、三菱重工や日本銅センター、ろう材メーカーの施工資料では、ガス溶接技能講習を修了した人がロウ付けを行うよう求めています。仕事でロウ付けをするなら、技能講習を受けておくのが確実です。
火を使うときの注意
- 作業の前に、周りの燃えやすい物を片づけ、消火器と水を用意する。
- 冷媒の漏れや残りがないことを確かめてから火を使う。
- 換気のよい状態で作業する。
気密試験の圧力
ロウ付けが終わったら、窒素で圧力をかけて漏れがないか確かめます。三菱重工とパナソニックのR32の機器の資料では、0.5MPaで5分以上、1.5MPaで5分以上と段階的に上げ、最後に4.15MPaまで上げて約1日置く手順です。三菱電機は、機器ごとの設計圧力まで上げるとしています。
- 試験の圧力は機器によって違うので、据付説明書の値に従う。
- 加圧には必ず窒素を使う。酸素や可燃性ガスは使わない。
- ロウ付けの直後で配管が熱いうちに加圧すると、冷えてから圧力が下がる。周りの温度が1℃下がると、圧力は約0.01MPa下がる(パナソニック)。
銅管のロウ付けについてよくある質問
銅管同士のロウ付けにフラックスは必要ですか
りん銅ろうを使えば、銅と銅はフラックスなしでつなげます。黄銅などの銅合金や鉄とつなぐときは、フラックスが必要です。エアコンの冷媒配管では、フラックスを使わないようメーカーが指示しています。
銀ろうとりん銅ろうはどちらを使えばいいですか
銅と銅の冷媒配管なら、メーカーが指定するりん銅ろう(BCuP)を使います。鉄やステンレスをつなぐときや、硫黄を含むガスの多い場所では、銀ろうを使います。
窒素を流さずにロウ付けしてもいいですか
冷媒配管では、窒素を流さずに加熱すると管の内側に酸化スケールができ、弁や圧縮機の故障の原因になります。メーカー各社は、窒素を流しながらロウ付けするよう指示しています。
バーナーでのロウ付けに資格はいりますか
酸素を使うガス溶接器なら、ガス溶接技能講習などの資格が必要です。酸素を使わないトーチについては、厚生労働省の補助テキストで資格は不要とされていますが、施工資料の多くは技能講習の修了者が作業するよう求めています。









