ディスクグラインダーの使い方砥石の種類と付け方・キックバック対策
ディスクグラインダーは、砥石を付け替えるだけで、溶接部の研削、さび落とし、鋼材の切断までこなせる道具です。一方で、砥石が割れて飛んだり、刃が材料に挟まって本体がはじかれたりする事故も多い道具です。この記事では、マキタ・HiKOKI・パナソニックの取扱説明書と、労働安全衛生規則・厚生労働省の告示、砥石メーカーの資料をもとに、各部の名前、砥石の種類と付け方、回転数と砥石の合わせ方、研削と切断のやり方、キックバックの防ぎ方、保護具と特別教育をまとめます。細かい操作は機種で違うので、使う機種の説明書も必ず確かめてください。
ディスクグラインダーの各部の名前
同じ部品でも、メーカーによって呼び名が違います。
| 部品 | マキタ | HiKOKI | パナソニック |
|---|---|---|---|
| 砥石の覆い | ホイールカバー | ホイルガード | トイシカバー |
| 下側の座金 | インナフランジ | ホイルワッシャ | ディスクフランジ |
| 上側の締め付けナット | ロックナット | ホイルナット | クランプナット |
| 軸を止めるボタン | シャフトロック | ロックピン | ロックピン |
| 横の持ち手 | グリップ | サイドハンドル | 補助ハンドル |
この記事では、覆いを「カバー」、上側のナットを「ロックナット」、横の持ち手を「サイドハンドル」と呼びます。
砥石・ディスクの種類と用途
| 種類 | 主な用途 | 使う部分 |
|---|---|---|
| 研削砥石(オフセット砥石) | バリ取り、溶接部の研削、さび落とし | 外周の下面。15〜30°傾けて当てる |
| 切断砥石 | 薄い鉄板や細い丸棒などの切断 | 外周だけ。側面は使わない |
| フラップディスク(多羽根ディスク) | 溶接ビードの仕上げ、研磨、さび落とし | 機種と製品の説明に従う |
| ダイヤモンドカッター | かわら、タイル、石材、コンクリートの切断 | 外周。乾式用を使う |
| ワイヤブラシ | さび落とし、塗装はがし | 専用のカバーを付けて使う |
| サンディングディスク | 塗装の下地みがきなどの仕上げ | 全面を当てず、約15°傾ける |
研削砥石で切断をしたり、切断砥石の側面で削ったりしてはいけません。労働安全衛生規則第120条でも、側面を使うための砥石以外は、側面を使ってはならないとされています。丸のこの刃(チップソー)をグラインダーに付けることも、各メーカーが禁止しています。
砥石の粒の種類は、パナソニックの説明書では、A(一般の鋼材)、WA(ステンレス)、C(アルミ・銅などの非鉄金属)、GC(石材・ガラスなどの非金属)と分けています。削る材料に合った砥石を選びます。
砥石の付け方
付け外しの前には、必ずスイッチを切って電源プラグを抜くか、バッテリを外します。回転中にシャフトロックを押してはいけません。
研削砥石(オフセット砥石)の付け方
- 軸を上に向け、下側のフランジを軸の切り欠きに合わせてはめる。
- 砥石のへこんだ側を上にして、フランジの出っぱり(パイロット部)にはめる。
- ロックナットの出っぱりを砥石側に向けて、軸にねじ込む。
- シャフトロックを押して軸を止め、専用のレンチでしっかり締める。締めすぎない。
切断砥石はナットの向きや部品が変わる
切断砥石は平らな板なので、研削砥石と同じ向きではうまく押さえられません。ここはメーカーで扱いが違います。
- パナソニック:クランプナットの出っぱりを、切断砥石と反対側に向けて付ける。
- HiKOKI:別売の切断用のホイルナットを使い、へこんだ側を切断砥石に向けて付ける。
- マキタ:補強ありの切断砥石は通常のフランジとナット、補強なしの切断砥石は専用のフランジとナットを使う。補強の有無がわからないときは、補強なし用を使う。
どのメーカーも、切断砥石を使うときは、切断用のカバーに付け替えるよう指示しています。ダイヤモンドカッターは、本体とカッターの回転方向の矢印を合わせて付けます。
回転数と砥石の合わせ方
砥石には、安全に回せる速さの上限として「最高使用周速度」が表示されています。単位はm/s(1秒間に砥石の外周が進む距離)です。一方、グラインダーには回転数(min-1、1分間に回る回数)が表示されています。単位が違うので、次の式で周速度に直して比べます。
| 周速度(m/s) | = 砥石の外径(mm)× 3.14 × 回転数(min-1)÷ 60,000 |
たとえば、外径100mmの砥石を12,000回転のグラインダーで回すと、100 × 3.14 × 12,000 ÷ 60,000 = 約62.8m/s です。砥石の最高使用周速度が72m/sなら、それより遅いので使えます。
| 砥石の外径 | 72m/sの砥石で回してよい回転数の上限 |
|---|---|
| 100mm | 13,758 min-1 |
| 125mm | 11,006 min-1 |
| 180mm | 7,643 min-1 |
数値はノリタケの技術資料の換算表によるものです。労働安全衛生規則第119条でも、最高使用周速度を超えて使ってはならないとされています。マキタ・HiKOKI・パナソニックの100mmのグラインダーは、どれも最高使用周速度72m/s以上の砥石を使うよう指定しています。
- グラインダーに表示された砥石の外径より大きい砥石を付けない。
- ほかの大きな機械で使って小さくなった砥石を、回転数の違う機械に流用しない(マキタの説明書)。
- 砥石の結合剤は時間がたつと弱くなるので、日本レヂボンは製造からなるべく3年以内に使うよう案内しています。
試運転の決まり
労働安全衛生規則第118条では、その日の作業を始める前に1分間以上、砥石を取り替えたときは3分間以上、試運転をすることとされています。試運転は、砥石を人のいない方向に向け、砥石の回転方向の前に立たずに行います(HiKOKIの説明書、クレトイシの資料)。
カバーは、砥石が割れたときに作業者を守るためのものです。労働安全衛生規則第117条では、回転中の砥石が作業者に危険を及ぼすおそれがあるときは、覆いを設けることとされています(直径50mm未満の砥石を除く)。カバーは外さず、作業者の側に砥石が出る部分が最も小さくなる位置に付けます。
研削のやり方
- 材料をバイスなどで固定する。
- サイドハンドルを付け、両手で本体をしっかり持つ。スイッチを入れるときは、回り始めの反動に備える。
- 砥石が材料に触れていない状態でスイッチを入れ、回転が上がってから当てる。
- 本体を15〜30°傾けて、砥石の外周の下面で削る。
- 強く押し付けない。本体の重さで削る程度にする。
- 終わったらスイッチを切り、回転が完全に止まってから置く。
新しい研削砥石は角が立っているので、前に押すと材料に食い込みます。はじめは手前に引いて使い、角がとれてから前後に動かします。砥石の角度を浅くしたまま使い続けたり、急に角度を変えたりすると、砥石の中心が抜ける原因になると、日本レヂボンは注意しています。
切断のやり方
- 切断用のカバーと切断砥石に付け替える。
- 材料をしっかり固定し、切り落とす側にも台を置いてたわまないようにする。
- 切る線の延長線上に体を置かない。
- 刃が材料に触れていない状態でスイッチを入れ、回転が安定してから、材料に対して直角にゆっくり切り込む。
- こじったり、強く押しすぎたりしない。
ジグザグに切る、曲線を切る、ガイドなしで斜めに切る、といった使い方は、各メーカーが禁止しています。ダイヤモンドカッターや切断砥石の1回の切込みは5mm以下にするよう、マキタとHiKOKIの説明書に書かれています。壁の中など裏が見えない場所を切るときは、ガス管・水道管・電気の配線に気をつけます。
キックバックの原因と防ぎ方
キックバックは、回転中の切断砥石やダイヤモンドカッターに急に大きな力がかかって回転が落ちたとき、その反動で本体や材料が作業者の側にはじき飛ばされる現象です。HiKOKIの説明書では、主な原因として次の3つを挙げ、特に挟み込みが最大の原因だとしています。
- 材料が切断砥石を挟み込む
- 曲線切りなど、本体をこじる作業をする
- 刃先を材料に当てたままスイッチを入れる
防ぐためにすること
- 長い材料は、端だけでなく、切る部分の近くにも受け台を置く。
- 途中で刃が止まったら、スイッチを切り、完全に止まってから切り口から離す。切り込んだまま再び起動しない。
- 本体を振り回されないよう、特に起動時は両手でしっかり持つ。
- 本体を万力などに固定して、据え置きの機械のように使わない。
充電式の機種には、急に回転が落ちると自動で止まる機能が付いたものもあります。ただしマキタは、この機能は「キックバックそのものを防止するものではありません」としています。
保護具と手袋
- 保護めがねは常に使う。粉じんの多い作業では防じんマスク、音の大きい作業では耳栓も使う(各メーカーの説明書)。
- 屋内や、タンク・管の中で、金属をグラインダーで削る・切る作業では、呼吸用保護具(防じんマスクなど)の使用が粉じん障害防止規則で義務づけられています。
- 軍手など、回転部に巻き込まれるおそれのある手袋は使いません(HiKOKI・パナソニックの説明書)。マキタも、繊維が本体に入って故障するとして、布製の手袋を使わないよう書いています。厚生労働省の教材では、皮手袋を使う例を示しています。
なお、手袋を禁止している労働安全衛生規則第111条の対象は、ボール盤や面取り盤などです。グラインダーを名指しした条文ではありませんが、メーカーと国の教材はどちらも軍手を避けるよう求めています。
砥石の取替えには特別教育が必要
労働安全衛生規則第36条第1号で、研削砥石の取替えと、取替えたときの試運転の業務は、特別教育を受けた人が行うこととされています。ディスクグラインダーの砥石は「自由研削用」で、科目と時間は告示で次のように決められています。
| 科目 | 時間 |
|---|---|
| 自由研削用研削盤・といし・取付け具などの知識 | 2時間 |
| といしの取付け方法と試運転の方法の知識 | 1時間 |
| 関係法令 | 1時間 |
| 実技(取付け方法と試運転の方法) | 2時間以上 |
| 合計 | 6時間以上 |
平面研削盤などに使う「機械研削用」の特別教育は、学科7時間・実技3時間以上で、別のものです。
実際に起きた事故
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」には、グラインダーの砥石が割れた事故が載っています。
- 天井ボードに切れ込みを入れていたところ、砥石がボード裏の金属の下地に当たって割れ、破片が当たって亡くなった。グラインダーにはカバーがなく、機械の回転数に合わない砥石を付けていた。保護具も使っていなかった。
- 直径150mm用のグラインダーに205mmの砥石を付けて試運転中、砥石が割れて飛び、2mほど離れた人に当たった。周速度は約67.6m/sで、砥石の最高使用周速度50m/sを超えていた。取り替えた人は特別教育を受けていなかった。
どちらも、カバー・砥石の適合・保護具・特別教育という、この記事で挙げた基本が守られていませんでした。
ディスクグラインダーについてよくある質問
研削砥石で鉄を切ってもいいですか
いけません。切断には切断砥石と切断用のカバーを使います。研削砥石で切断したり、切断砥石の側面で削ったりすると、砥石が割れる原因になります。
砥石を削るときの角度は何度ですか
メーカー各社の説明書では、本体を15〜30°傾けて、砥石の外周の下面で削るよう指示しています。新しい砥石ははじめ手前に引いて使います。
100mmのグラインダーに125mmの砥石を付けてもいいですか
付けてはいけません。グラインダーに表示された大きさの砥石を使います。同じ回転数でも、外径が大きいほど周速度が速くなります。上の事故の2件目は、このケースです。
グラインダーの砥石の交換に資格はいりますか
仕事で砥石を取り替えたり、取替え時の試運転をしたりするには、「自由研削といしの取替え等の業務」の特別教育(学科4時間・実技2時間以上)を受ける必要があります。









