さしがねの使い方裏目・丸目の意味と直角・勾配の出し方
さしがね(曲尺・差し金)は、長さを測るだけでなく、直角の線を引く、勾配を出す、丸太から取れる角材の大きさを知る、材料を等分に割るなど、大工仕事の基本になる道具です。この記事では、さしがねの各部の名前と目盛の種類、裏目(角目)と丸目の意味、直角と勾配の出し方など、現場でよく使う使い方をまとめます。目盛の配置は製品によって違うので、手持ちのさしがねの表示とあわせて読んでください。
さしがねの各部の名前と大きさ
長手・妻手・矩の手
L字の長いほうを長手(ながて)、短いほうを妻手(つまて)と呼びます。妻手は「短手」「矩手(かねて)」とも呼ばれます。JIS B 7534(金属製角度直尺)では、長いほうを長枝、短いほうを短枝と呼んでいます。L字の曲がった角は、矩の手(かねのて)や角(すみ)と呼ばれます。
よく使われる大きさ
JISの呼び寸法は、長枝の外側の目盛の長さで250mm・300mm・450mm・500mmの4種類です。大工仕事でよく使われるのは、長手50cm・妻手25cmの50cm型です。幅は15mm前後のものが多く、この幅をほぞ穴などの墨付けに使うこともあります。
表と裏
長手を上、妻手を右に向けた面を表と呼ぶのが一般的です。表にはふつうのcm・mmの目盛(表目)があり、裏には角目や丸目など、製品によって違う目盛が付いています。
さしがねの目盛の種類
| 目盛 | 意味 | 使い方 |
|---|---|---|
| 表目 | ふつうの長さの目盛 | 長さを測る、直角・勾配を出す |
| 角目(裏目) | 表目の√2倍(約1.414倍)の目盛 | 丸太の直径を測ると、取れる角材の1辺が分かる |
| 丸目 | 表目の1/π倍(約0.318倍)の目盛 | 円の直径を測ると、円周の長さが分かる |
| ほぞ穴目盛 | 端を0にした目盛 | ほぞ穴に差し込んで深さを測る |
| 内目盛 | 内側の縁の目盛 | 材料の端に引っかけて測る、けがく |
角目(裏目)は表目の√2倍
角目の1目盛は、表目の1目盛の√2倍の長さです。丸太の直径を角目で測ると、読んだ数字が、その丸太から取れる正角材の1辺の長さになります。たとえば角目で15と読めれば、15cm角が取れる太さです。直径Dの円の中に入る正方形の1辺が D ÷ √2 になることを、目盛で読めるようにしたものです。
規矩術では、角目で1尺は1尺角の正方形の対角線の長さに当たるので、隅木など対角線の方向の部材の墨付けにも使います。
丸目は表目の1/π倍
丸目の1目盛は、表目の1目盛を円周率(約3.14)で割った長さで、表目より細かい目盛です。円の直径を丸目で測ると、読んだ数字がそのまま円周の長さになります。丸目で60と読めれば、円周は60cmです。「円周を測って直径を出す目盛」ではないので、向きを間違えないようにします。
内目盛の基点
内目盛には、0が内側の角にあるもの(内側基点)と、外側の角にあるもの(外側基点)があります。内側基点は材料の端に引っかけてそのまま測るのに、外側基点は外側の目盛で引いた線を0として測るのに便利です。
さしがねの基本の使い方
直角の線を引く
長手を材料のまっすぐな縁にしっかり当て(引っかけ)、妻手に沿って線を引くと、縁に直角な線が引けます。材料の縁が曲がっていたり欠けていたりすると直角になりません。当てる縁がまっすぐかを先に確かめます。
さしがねの直角を確かめる
落としたり曲げたりしたさしがねは、直角が狂っていることがあります。JISでは、直角の狂いは100mmにつき0.1mm以下とされています。まっすぐな板の縁に当てて線を引き、さしがねを裏返して同じ線に当て、線が重なるかで確かめられます。
さしがねで勾配を出す
寸勾配の考え方
大工の勾配は、水平に10(1尺)進んだときに何寸上がるかで表します。4寸勾配なら、水平10に対して高さ4です。水平の方向を殳(こ)、高さの方向を勾(こう)、斜めの方向を玄(げん)と呼びます。10寸勾配(45°)は矩勾配(かねこうばい)と呼ばれます。
4寸勾配の線を引く
長手を水平、妻手を高さとして、長手の10と妻手の4を表目で合わせます。垂木のように、材料の縁が勾配の斜辺(玄)になる場合は、縁に長手の10と妻手の4を当てたまま、妻手に沿って線を引くと、鉛直の線(立水)になります。長手に沿って引けば水平の線(陸水)です。cm目盛なら長手10cm・妻手4cmで同じ勾配になります。
勾配ごとの合わせ方
| 勾配 | 長手 | 妻手 | 角度 |
|---|---|---|---|
| 3寸勾配 | 10 | 3 | 約16.7° |
| 4寸勾配 | 10 | 4 | 約21.8° |
| 5寸勾配 | 10 | 5 | 約26.6° |
| 6寸勾配 | 10 | 6 | 約31.0° |
| 10寸勾配(矩勾配) | 10 | 10 | 45° |
隅木の勾配(隅勾配)
寄棟の隅木のように、平面で45°に入る材の勾配は、長手に裏目の10、妻手に表目の平勾配の数字(4寸勾配なら4)を合わせて出します。隅木は水平の長さが平の√2倍になるので、裏目を使います。
さしがねの便利な使い方
材料を等分に割る
割りたい材の片側の縁にさしがねの0を当て、反対側の縁に割りやすい数字(3等分なら15や30など)が来るように斜めに当てて、等分の目盛の位置に印を付けます。材の幅を測らなくても等分できます。
円周を知る
丸い材や穴の直径を丸目で測ると、円周の長さがそのまま読めます。
円の中心を出す
円の縁にさしがねの角を当て、長手と妻手が縁と交わる2点を結びます。向きを変えてもう1本引くと、2本の交点が円の中心です。
丸太から取れる角材を知る
丸太の細いほうの端(末口)の直径を角目で測ると、取れる正角材の1辺が分かります。
尺の目盛(尺相当目盛)について
計量法により、取引や証明に尺の単位を使うことはできません。昔ながらの寸法で仕事をするために、1寸を1/33mとした「尺相当目盛」のさしがねが販売されています。JIS B 7534の目盛はmmなので、尺相当目盛の製品はメーカーの表示を確かめて選びます。
さしがねについてよくある質問
裏目と角目は同じものですか
規矩術では、裏面にある√2倍の目盛(角目)を裏目と呼びます。ただし、製品によっては裏面もふつうのcm目盛(表裏同目)のものがあるので、「裏の目盛」全部が角目とは限りません。
丸目で円周を測ると直径が分かりますか
いいえ。丸目は直径を測って円周を読むための目盛です。円周から直径を出すときは、円周を3.14で割って計算します。
さしがねの直角が狂ったらどうしますか
狂ったさしがねは正確な墨付けに使えないので、買い替えるのが確実です。落とさないように扱い、使ったあとは平らな所に置いて保管します。
さしがねとスコヤの違いは
スコヤは直角を出すための厚みのある定規で、材料の縁に当てやすいのが特長です。さしがねは薄くて長く、長さを測る・勾配を出すなど、使い方が幅広いのが特長です。









