木材の継手と仕口の種類代表的な形と使う場所を部材別に一覧
木造の軸組では、材を長さ方向に継ぐ「継手」と、角度をつけて組む「仕口」の形を、部材ごとに使い分けます。この記事では、住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書(2025年版・平成22年版)」、国土交通省の「公共建築木造工事標準仕様書(令和7年版)」、建築基準法施行令と告示、伝統的構法の検討委員会の報告書などをもとに、代表的な継手・仕口の形と、仕様書でどの部材に挙がっているかを一覧にまとめます。
継手と仕口の違い
- 継手(つぎて):部材を長さ方向に接続する接合部。住宅金融支援機構の仕様書(平成22年版)の解説では「木構造においては継手は最大の弱点となる」としています。
- 仕口(しぐち):2つ以上の部材が直角、またはある角度をなして結合される部分。
伝統的構法の検討委員会の報告書(平成22年度)も同じ定義で、仕口は「普通は90度」で組むものとしています。
法令は継手・仕口の種類を決めていない
建築基準法施行令第47条は、構造耐力上主要な部分の継手・仕口を「ボルト締、かすがい打、込み栓打その他の国土交通大臣が定める構造方法」で、存在応力を伝えるように緊結することを求めています。平成12年建設省告示第1460号は、筋かいの端部(第一号)と柱頭・柱脚(第二号)の接合方法を決め、それ以外の継手・仕口(第三号)は、存在応力を伝えるように緊結する、とだけ定めています。腰掛け蟻継ぎのような継手の種類を、法令が名指しで決めているわけではありません。
「2015年版 建築物の構造関係技術基準解説書」(2018年追補)では、第三号の部分の例として、外壁上部の胴差し・けたなどの継手に腰掛け蟻継ぎ短冊金物補強・腰掛け鎌継ぎ短冊金物補強・追っかけ大栓継ぎ・金輪継ぎ・しっぱさみ継ぎを、建物内部で柱や横架材の直上で継ぐ場合に台持ち継ぎを挙げています。これらと同等以上のものを使ってよい、とする例示です。部材ごとの種類は、工事仕様書や設計図書の特記で決めます。
代表的な継手の種類
住宅金融支援機構の仕様書(平成22年版)の解説では、現在の木造住宅に使われている継手として、突付け継ぎ・相欠き継ぎ・腰掛けあり継ぎ・台持継ぎ・腰掛けかま継ぎ・追掛け大せん継ぎを挙げています。
腰掛け蟻継ぎ
蟻の頭のような形のほぞで継ぐ継手に、上にのる材を受け支える「腰掛け」を付けたものです(ものつくり大学の教材)。仕様書の解説では「通常、土台や軒げたなどの継手に用いられる」としています。形や寸法の目安は蟻継ぎの記事で詳しくまとめています。
腰掛け鎌継ぎ
男木の先端に、蛇の鎌首のような台形のほぞを持った継手です(ものつくり大学の教材)。仕様書の解説では「腰掛けあり継ぎとほとんど同様に用いられる」としています。
追掛け大栓継ぎ
ものつくり大学の教材では、相欠きにあごを付けた略鎌系の継手で、すべり込む部分に1/10程度のすべり勾配をつけて2つの材を引き寄せる、と説明しています。継手の中でも強固なものの一つで、材せいの3倍程度の長さがもっとも強度が期待できるとしています。仕様書の解説では、胴差・軒げたなどに多く使い、位置はなるべく柱に近く、かつ柱を避けたところにする、としています。
台持ち継ぎ
仕様書の解説では、大ばりなどの継手に使い、柱の上やけたの上に継手を設けて2つの材を重ね合わせ、ボルト締めとする場合が多い、としています。
金輪継ぎ
伝統的構法の検討委員会の報告書では、金輪継ぎの仲間として隠し金輪継ぎ・尻挟み継ぎを挙げ、小屋梁・母屋桁に使う継手に分類しています。住宅金融支援機構の仕様書の各部材の規定には挙がっていません。
相欠き継ぎ・突付け継ぎ・そぎ継ぎ
- 相欠き継ぎ:2つの材を段形に欠き込み、ボルト締めか釘打ちにする。
- 突付け継ぎ:木口どうしを突き付け、両側に添え板を当ててボルト締めか釘打ちにする。
- そぎ継ぎ:あまり力を受けない継手に使う。
いずれも住宅金融支援機構の仕様書(平成22年版)の解説による説明です。
部材別の継手の一覧
住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書(2025年版)で、部材ごとに挙がっている継手です。仕様書では「腰掛けあり継ぎ」「腰掛けかま継ぎ」とかなで書いています。
| 部材 | 継手 | 条項 |
|---|---|---|
| 土台 | 腰掛け蟻継ぎ | 5.1.2 |
| 土台 | 腰掛け鎌継ぎ | 5.1.2 |
| 胴差し | 追掛け大栓継ぎ | 5.1.6 |
| 胴差し | 腰掛け鎌継ぎ | 5.1.6 |
| 軒げた | 追掛け大栓継ぎ | 5.1.7 |
| 軒げた | 腰掛け鎌継ぎ | 5.1.7 |
| 軒げた | 腰掛け蟻継ぎ | 5.1.7 |
| 間仕切りげた | 腰掛け鎌継ぎ | 5.1.8 |
| 間仕切りげた | 腰掛け蟻継ぎ | 5.1.8 |
| 小屋ばり | 追掛け大栓継ぎ | 5.6.2 |
| 小屋ばり | 腰掛け鎌継ぎ | 5.6.2 |
| 丸太の小屋ばり | 台持ち継ぎ | 5.6.2 |
| むな木・母屋 | 腰掛け鎌継ぎ | 5.6.4 |
| むな木・母屋 | 腰掛け蟻継ぎ | 5.6.4 |
| 大引き | 相欠き継ぎ | 5.9.1 |
| 大引き | 腰掛け蟻継ぎ | 5.9.1 |
| 2階床ばり | 台持ち継ぎ | 5.9.5 |
| 2階床ばり | 追掛け大栓継ぎ | 5.9.5 |
| 2階床ばり | 腰掛け鎌継ぎ | 5.9.5 |
| 根太 | 突付け継ぎ | 5.9.4 |
- 小屋ばり:製材・集成材の場合。腰掛け鎌継ぎは、はりせい120mm程度のものに短ざく金物・六角ボルトを併用。
- 丸太の小屋ばり:末口135mm以上は台持ち継ぎ、135mm未満はやりちがい。どちらも受け材の上で継ぐ。
- むな木・母屋、大引き:N75くぎ2本打ちを併用(大引きの相欠き継ぎも同じ)。
- 2階床ばり:台持ち継ぎは六角ボルト2本締め、腰掛け鎌継ぎは短ざく金物・六角ボルトを併用。
胴差し・小屋ばり・2階床ばりには、腰掛け蟻継ぎは挙がっていません。平成22年版も中身は同じで、小屋組・床組の章番号が1つずつずれています(むな木・母屋は5.5.4→5.6.4など)。
代表的な仕口の種類
- 大入れ蟻掛け:伝統的構法の検討委員会の報告書では、土台や大梁と小梁の仕口の例に挙げています。
- かぶと蟻掛け:同じ報告書では、桁と小屋梁の仕口の例です。柱の上にまず桁を架け、梁を桁に蟻落としか兜蟻で架ける組み方を「京呂」と説明しています。
- 渡りあご:同じ報告書では、大引きと根太の仕口の例です。柱の上にまず梁を架け、その上に大乗りか渡りあごで桁を架ける組み方を「折り置き」と説明しています。
- ほぞ差し:ほぞ穴にほぞを差し込み、くさび締め・釘・込み栓などで留める方法。平ほぞ・長ほぞ・短ほぞ・小根ほぞ・扇ほぞなどがあります(住宅金融支援機構の仕様書 平成22年版)。
- 短ほぞ:ほぞの長さが材の幅の1/2以下のもの。位置決めやずれ止め程度の役割なので、金物と一緒に使います(ものつくり大学の教材)。
- 小根ほぞ:平ほぞを2段にしたもの。割りくさびを入れた小根ほぞ差し割りくさび締めは、主に直交する土台の仕口に使います(ものつくり大学の教材)。
部材別の仕口の一覧
住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書(2025年版)で、取り合いごとに挙がっている主な仕口です。
| 取り合い | 仕口 | 条項 |
|---|---|---|
| 土台の隅部 | 大入れ蟻掛け | 5.1.2 |
| 土台の隅部 | 片蟻掛け | 5.1.2 |
| 土台のT字 | 大入れ蟻掛け | 5.1.2 |
| 胴差しと通し柱 | かたぎ大入れ | 5.1.6 |
| 間仕切りげた | 大入れ蟻掛け | 5.1.8 |
| 小屋ばりと軒げた | かぶと蟻掛け | 5.6.2 |
| 小屋ばりと軒げた | 渡りあご | 5.6.2 |
| 小屋束の上下 | 短ほぞ差し | 5.6.3 |
| 母屋のT字 | 大入れ蟻掛け | 5.6.4 |
| 大引きと土台 | 大入れ蟻掛け | 5.9.1 |
| 2階床ばりと柱 | かたぎ大入れ | 5.9.5 |
| 2階床ばりのT字 | 大入れ蟻掛け | 5.9.5 |
| 床ばりと横架材 | 渡りあご掛け | 5.9.5 |
- 土台の隅部:このほか大入れこねほぞ差し割りくさび締めも挙がっています。
- かたぎ大入れ:柱との取り合いは、かたぎ大入れ短ほぞ差しに羽子板ボルトなどの金物を併用。
- 小屋ばりと軒げた:どちらも羽子板ボルト締め。上端をそろえる場合は大入れ蟻掛けとします。
- 大引きと土台:このほか腰掛けか乗せ掛けでもよく、いずれもN75くぎ2本斜め打ち。
柱と横架材の仕口は、耐力壁でない柱では、短ほぞ差しに山形プレート・かど金物・かすがいなどを組み合わせるか、長ほぞ差し込み栓打ちとします(5.2.3)。耐力壁の柱は、告示1460号の表と同じ接合方法から特記で選びます(5.2.2)。
継手の位置の決まり
住宅金融支援機構の仕様書(2025年版)では、継手の種類とあわせて位置も決めています。
- 土台:柱と床下換気孔の位置を避ける。
- 胴差し:はりと筋かいを受ける柱間を避け、柱から持ち出す。
- 軒げた・間仕切りげた:はりを受ける柱間を避け、柱から持ち出す。
- むな木・母屋:束の位置を避け、束から持ち出す。
- 大引き:床束心から150mm内外持ち出す。
- 2階床ばり:台持ち継ぎは受け材の上。追掛け大栓継ぎ・腰掛け鎌継ぎは、上木の先端が受け材心から150mm内外になるよう下木を持ち出す。
公共建築木造工事標準仕様書(令和7年版)は、土台の継手を柱と床下換気口の位置を避け、アンカーボルトが継手の上側の材の継手付近に来るようにする、としています。継手・仕口の形は「特記による」として、種類は名指ししていません。
よくある失敗
継手を1か所に集める
住宅金融支援機構の仕様書(平成22年版)の解説では、継手が平面的にも立体的にも1か所に集中すると耐力が下がるため、「ちどり」に配置した方がよいとしています。検討委員会の報告書も、継手の位置を一直線にそろえる「芋継ぎ」は構造的に弱点となり、避けるべきとしています。
短い材を継いで使う
同じ仕様書では、やむを得ず短材を使う場合の長さを、土台は1m内外、その他は2m内外としています。
仕口で材を欠きすぎる
同じ仕様書の解説では、1本の柱に四方から横架材が取り付くような場合は、柱の断面を大きくするか、金物で補強する必要があるとしています。公共建築木造工事標準仕様書でも、余分な彫込み・切込みをしないこと、のこ引きで横引きを深くしないことを求めています。
継手と仕口についてよくある質問
継手と仕口はどう違いますか
材を長さ方向に継ぐのが継手、直角などの角度をつけて組むのが仕口です。同じ蟻の形でも、腰掛け蟻継ぎは継手、大入れ蟻掛けやかぶと蟻掛けは仕口です。
継手の種類は法律で決まっていますか
決まっていません。施行令第47条と告示1460号は存在応力を伝えるように緊結することを求めていて、種類は工事仕様書や特記で決めます。
胴差しの継手には何を使いますか
住宅金融支援機構の仕様書(2025年版)では、はりと筋かいを受ける柱間を避けて柱から持ち出し、追掛け大栓継ぎか腰掛け鎌継ぎにするとしています。腰掛け蟻継ぎは挙がっていません。一方、構造関係技術基準解説書では、短冊金物で補強した腰掛け蟻継ぎも外壁上部の横架材の継手の例に挙げているので、資料によって扱いが違います。
金輪継ぎはどこに使いますか
伝統的構法の検討委員会の報告書では小屋梁・母屋桁の継手に、構造関係技術基準解説書では外壁上部の胴差し・けたなどの継手の例に挙げています。住宅金融支援機構の仕様書の部材の規定にはないので、特記で確かめます。









