裏波溶接とは?ティグ・被覆アークで裏波を出すコツとバックシールド
裏波溶接(うらなみようせつ)は、片側からだけ溶接して、裏側にもきれいなビード(裏波ビード)を出す溶接です。裏から溶接できない配管の突合せ溶接などで使われ、溶接技能者の試験でも問われる大切な技術です。この記事では、JIS Z 3001-7の用語の定義、ティグ溶接と被覆アーク溶接での裏波の出し方の要点、バックシールド(ガスバッキング)、きれいな裏波を出すためのポイントをまとめます。溶接の条件は、材料や継手、使う溶接材料の説明書に従ってください。
裏波溶接とは
用語の意味(JIS Z 3001-7)
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 裏波ビード | 片側溶接で、電極と反対側(裏側)にできるビード |
| 裏波溶接 | 裏当て材を使わずに、きれいな裏波ビードが得られる片側溶接 |
| 裏溶接 | 主な溶接面の反対の面から行う溶接 |
| 裏当て | 片側から溶接するためや、溶け落ち・欠陥を防ぐために、開先の底に裏から当てる金属板や粒状のフラックス |
| ガスバッキング(バックシールド) | 大気との反応を防ぐために、主にガスの圧力を利用して裏側を保護する方法 |
裏波溶接が使われる場面
- 配管の突合せ溶接など、管の中から溶接できない継手
- 裏はつりや裏溶接の手間をはぶきたい継手
- JIS溶接技能者の「N」(裏当て金なし)の試験。裏当て金を使わないので、裏波を出す技量が必要になります。
図面での裏波溶接の記号
JIS Z 3021では、片側からの突合せ溶接でルートまで完全に溶け込ませる裏波溶接を指示するとき、裏波溶接の補助記号を、基線に対して基本記号の反対側に付けます。
ティグ溶接の裏波
ティグ溶接は、電流と溶加棒を足す量を別々に調整できるので、パイプの全周溶接や裏波溶接によく使われます。神戸製鋼のカタログでは、軟鋼のティグ溶接について次のような条件が示されています。
- 電源は直流の棒マイナス(DC−)が一般的
- シールドガスは溶接用の高純度アルゴンで、流量12〜18L/min
- 電極の突出しは5mm程度、アーク長は1〜3mm
- 裏波溶接では、裏面の酸化を防ぐためにバックシールドをすることが望ましい
ステンレスのティグ溶接の裏波では、裏ビードの酸化を防ぐためにバックシールドが必要とされています。ただし、スラグで裏ビードを守るフラックス入りの溶加棒(TG-Xシリーズなど)を使う場合は、バックシールドを使わなくてもよいとされています。
被覆アーク溶接の裏波
被覆アーク溶接で裏波を出すときは、裏波用の低水素系溶接棒(神戸製鋼のLB-52Uなど)が使われます。
- 継手の初層に使い、裏はつりを省略できる
- 一般の溶接より低い電流でアークが安定する
- 適正な電流と開先の形で、きれいな裏波が出る
- クレータの処理は、開先の側面にクレータを移してからアークを切る
LB-52Uの推奨電流(裏波用)は、棒径2.6mmで30〜80A、3.2mmで60〜110A、4.0mmで90〜140Aとカタログにあります。
同じカタログでは、LB-52Uを直流の棒マイナス(DC−)で使うのは初層(ルートパス)だけとされています。アークは捨て金か開先の側面で出し、アーク長はできるだけ短く保ちます。使う前には300〜350℃で30〜60分乾燥します。
きれいな裏波を出すためのポイント
開先の寸法をそろえる
ルート間隔とルート面がばらつくと、裏波の出方が安定しません。ルート間隔が広すぎると溶け落ち、狭すぎると裏まで溶け込まなくなります。仮付けの段階で、全周の寸法をそろえておきます。
開先をきれいにする
開先のスケール・さび・水分・油は、ピットやブローホールの原因になります。溶接の前に取り除きます。
溶融池の見え方を確かめる
裏まで溶け込んでいるかは、溶融池の先に小さな穴(キーホール)ができているかで確かめながら進める方法があります。キーホールの大きさが一定になるように、電流と速度、角度を保ちます。
裏側を保護する
ステンレスなど裏側が酸化しやすい材料では、バックシールドで裏側の空気をガスに置き換えてから溶接します。
裏波溶接についてよくある質問
裏波と裏当て金ありの溶接の違いは
裏当て金ありの溶接は、開先の底に金属板を当てて、その板ごと溶接します。裏波溶接は裏当てを使わずに、片側からの溶接だけで裏側にビードを出します。
裏波が出ない原因は
電流が低い、溶接速度が速い、ルート間隔が狭い、ルート面が大きいなどが原因になります。開先の寸法と溶接条件を見直します。
裏波が垂れすぎる(溶け落ちる)原因は
電流が高い、溶接速度が遅い、ルート間隔が広すぎるなどが原因になります。









