水切り板金の種類と納まり土台水切り・雨押え・唐草の寸法
水切り板金は、屋根や外壁を伝ってきた雨水を、建物の中に入れずに外へ切るための板金です。土台水切り、雨押え、唐草、ケラバ水切り、谷板など、付ける場所によって名前と納め方が違います。この記事では、国土交通省の公共建築工事標準仕様書(令和7年版)と、住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書、日本窯業外装材協会・外壁メーカー・瑕疵保険の設計施工基準をもとに、水切りの種類と役目、立上がりや重ねの寸法、土台水切りと通気層の納まり、はぜの寸法、雨漏りの多い場所をまとめます。仕様書の数値は版や資料によって違うところがあるので、出典と一緒に示します。
水切り板金の種類と役目
| 名前 | 付ける場所 | 役目 |
|---|---|---|
| 土台水切り | 外壁のいちばん下、土台の上 | 外壁を流れた雨を土台側に回さない。通気層に入った水の出口と、通気の入口にもなる |
| 雨押え | 下屋の屋根が外壁に当たるところ | 屋根と壁のすき間から雨が入るのを防ぐ |
| 壁止まり役物 | 下屋の軒先が外壁にぶつかるところ | 雨押えの先で水を返し、壁のほうへ伝わらせない |
| 唐草(軒先水切り) | 軒先の広小舞の先 | 屋根の端を納め、雨水を垂直に落とす |
| ケラバ水切り | 屋根の妻側の端 | 屋根を伝った雨が外壁に回り込まないようにする |
| 谷板 | 2つの屋根面がぶつかる入隅。壁際の捨て谷もある | 谷に集まる雨を流す |
| 窓まわりの水切り | サッシの下枠 | サッシから落ちた水が外壁の表面を伝わないようにする |
| 笠木 | バルコニーの手すり壁やパラペットの天端 | 天端から雨が入るのを防ぐ |
住宅金融支援機構の仕様書(平成20年版)の参考図では、雨漏りの起きやすい場所として、谷、けらば、軒先と壁の取合い、下屋根と壁の取合い、棟違い、トップライトまわりを挙げています。どれも水切り板金が関わる場所です。
雨押えの立上がり寸法
| 出典 | 対象 | 立上がり |
|---|---|---|
| 国交省 標準仕様書(令和7年版) | 長尺金属板葺の雨押え | 120mm程度 |
| 国交省 木造工事標準仕様書(令和7年版) | 銅板葺の雨押え板 | 90mm以上 |
| 住宅金融支援機構(平成22年版) | 銅板以外の雨押え包み板 | 120mm以上 |
| 住宅金融支援機構(平成22年版) | 銅板の雨押え包み板 | 60mm以上 |
| 住宅金融支援機構(平成22年版) | サイディング外壁などの水切り・雨押え | 60mm以上 |
雨押えは壁に沿って立ち上げ、先端をむだ折り(あだ折り)して壁の下地に留めます。住宅金融支援機構の仕様書では、釘留めの間隔を450mm程度としています。同じ雨押えでも資料と屋根材で数値が違うので、現場の設計図書と使う仕様書で確かめてください。なお、住宅金融支援機構の現行の仕様書(2025年版)は有料のため、この記事では無料で公開されている平成22年版で確かめた値を載せています。
下ぶき材は雨押えより上まで立ち上げる
雨押えの裏では、屋根の下ぶき材(ルーフィング)が止水の役目をします。国交省の仕様書と瑕疵保険の設計施工基準では、壁との取合いの下ぶき材を、壁に沿って250mm以上、かつ雨押えの上端から50mm以上立ち上げるとしています。住宅リフォーム・紛争処理支援センターの事例集にも、雨押え包み板と下ぶき材の立上げが足りず、風にあおられた雨水が下ぶき材の裏に入った事例が載っています。
土台水切りと通気層の納まり
外壁通気構法では、土台水切りが通気層の入口になり、通気層に入った雨水の出口にもなります。
- 土台水切りを水平に取り付ける。継目は30mm以上重ね、重ね目にシーリング材を入れる。
- 透湿防水シートを、土台水切りの上にかぶせる。かぶせる位置は、水切りの立上りの下端から15mm程度まで。
- 通気胴縁を付け、外壁材を張る。
- 外壁材の下端と土台水切りの間に、10〜15mmのすき間をあける。
数値は国交省の木造工事標準仕様書(令和7年版)と、日本窯業外装材協会の「窯業系サイディングと標準施工」によるものです。ここで大事なのは次の2点です。
- 透湿防水シートは水切りの「上」にかぶせる。水切りの取付けは、透湿防水シートより先に済ませておく(国交省の木造工事標準仕様書)。
- 外壁材の下端と土台水切りのすき間を、シーリング材などでふさがない(日本窯業外装材協会)。国交省の仕様書でも、土台水切りと外壁の取合いは通気を妨げない形にするとしている。
日本窯業外装材協会は、サイディングを土台水切りに突き付けて張ると、毛細管現象で水を吸い上げ、劣化や凍害の原因になるとしています。通気層の厚さは、日本窯業外装材協会と瑕疵保険の基準では15mm以上、ニチハの資料では12mm以上としています。
唐草・ケラバ・谷板の寸法
| 部位 | 内容 | 寸法 |
|---|---|---|
| 唐草 | 捨て部分の幅 | 80mm以上 |
| 唐草 | 下げ部分の下端と広小舞の下端のあき | 10mm以上 |
| 唐草 | 継手(端をむだ折りして重ねる) | 60mm以上 |
| 唐草 | 留め釘の長さ | 32mm程度 |
| 谷板 | 継手 | 原則として設けない(長尺の板を使う) |
| 谷の下ぶき | 谷底からの重ね | 250mm以上 |
数値は国交省の木造工事標準仕様書(令和7年版)と標準仕様書(令和7年版)によるものです。唐草の寸法は、住宅金融支援機構の平成20年版でも同じです。谷の下ぶきは、住宅金融支援機構の平成22年版では「谷底から200mm以上」で、ここは資料によって違います。
ケラバは、軒の出がない場合に特に注意が必要です。住宅リフォーム・紛争処理支援センターの事例では、強風のときにケラバ水切りと外壁のすき間から雨が吹き込んだ例が紹介されています。対策として、水切りの立下りを十分な長さにすること、風で大きく変形しない強さにすること、屋根と壁の防水層を途切れさせないことが挙げられています。
水切り板金の材料と板厚
| 材料 | 規格 |
|---|---|
| ガルバリウム鋼板(塗装品) | JIS G 3322(塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板) |
| カラー鉄板 | JIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板) |
| ステンレス(塗装品) | JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板) |
| 銅板 | JIS H 3100(銅及び銅合金の板及び条) |
国交省の標準仕様書では、特記がなければ JIS G 3322 の屋根用コイルを使うとしています。ガルバリウム鋼板のめっきは、アルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%です(日本製鉄)。
板厚は、住宅金融支援機構の平成22年版で、葺き板が0.35mm以上(塗装ステンレスと銅は0.3mm以上)、谷の部分と吊子が0.4mm以上、水切り・雨押えが0.35mmです。国交省の仕様書では、板厚は「特記による」とされ、数値は書かれていません。
金属板を留める釘などは、板の種類に合わせて選びます。国交省の木造工事標準仕様書では、亜鉛めっきをした鉄製かステンレス製とし、銅板には銅製かステンレス製を使うとしています。
はぜと折り返しの寸法
| 加工 | 寸法 |
|---|---|
| 一重はぜ(小はぜ) | 上はぜ12mm程度、下はぜ15mm程度 |
| 二重はぜ(巻きはぜ) | 1折り目は一重はぜと同じ、2折り目は上下同じ寸法 |
| 吊子 | 幅30mm、長さ70〜80mm程度 |
数値は国交省の木造工事標準仕様書(令和7年版)によるものです。住宅金融支援機構の仕様書の参考図には、「雨水の毛細管現象を防ぐために、はぜの折り返し寸法に十分注意する必要がある」と書かれています。
- 折り曲げるときは、塗装やめっきに亀裂が出ないようにする。
- 水切り・雨押えの板の端は、すべて折り返す(住宅金融支援機構の仕様書)。
- 釘打ちした釘の頭は、シーリング処理をする。
- 壁当たりの軒先の水返しは、切り込みを入れて加工しない(国交省の木造工事標準仕様書)。雨押えを立ち上げて袋加工にするか、壁止まり役物を付ける。
シーリングに頼らない納め方
住宅リフォーム・紛争処理支援センターの資料では、建物の防水を、屋根材や外壁材などの仕上げ材(1次防水面)と、その内側の防水紙など(2次防水面)の二重で考えています。外壁メーカーのニチハも、外壁材の裏には強風時などに雨水が入るため、防水紙・防水テープと外壁材による「二重防水」が重要だとしています。
シーリングは紫外線や熱で劣化し、はがれやひび割れが起きるので、定期的な手入れが必要です。水切りを納めるときは、シーリングだけで水を止めようとせず、防水紙と下ぶき材を決められた寸法で重ね、屋根と壁の防水面を途切れさせないことが基本になります。
雨漏りが多い場所
住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)によると、新築の木造戸建住宅の保険事故の9割以上が雨漏りです。瑕疵保険の事故データ(2009〜2023年)では、雨水が入った場所は次のとおりです。
| 雨水が入った場所 | 割合 |
|---|---|
| 外壁の開口部(窓など) | 29.6% |
| 外壁面 | 26.2% |
| 勾配屋根・天窓 | 20.2% |
同センターは、屋根の軒先が外壁の途中に接している形や、パラペットと屋根の取合いは雨漏りのリスクが高いとしています。どちらも、雨押えや壁止まり役物の納まりが重要になる場所です。
水切り板金についてよくある質問
土台水切りとサイディングのすき間はどれくらいですか
国交省の木造工事標準仕様書と日本窯業外装材協会では、10〜15mmです。このすき間は通気と排水のためのものなので、シーリング材などでふさぎません。
雨押えは何mm立ち上げればいいですか
国交省の標準仕様書では120mm程度、住宅金融支援機構の平成22年版では雨押え包み板が120mm以上(銅板は60mm以上)です。資料や屋根材で違うので、設計図書と使う仕様書に従ってください。下ぶき材は、雨押えの上端より50mm以上高く立ち上げます。
透湿防水シートは土台水切りの上ですか下ですか
上にかぶせます。国交省の木造工事標準仕様書では、水切りの立上りの下端から15mm程度の位置までかぶせ、両面粘着防水テープで留めるとしています。
水切り板金の材料は何がいいですか
国交省の標準仕様書では、特記がなければ塗装ガルバリウム鋼板(JIS G 3322)を使います。仕様書では、ほかにカラー鉄板、塗装ステンレス、銅板なども挙げられています。









